雄大な阿蘇山の麓をのんびり走るのは、
2016年4月の熊本地震で被害を受けて以来、
区間運転を余儀なくされていた南阿蘇鉄道。
撮影時に運行できたのは、
被害を免れた、たった7.1キロの区間のみ。

災害によりJRに接続することもできず、
一番の見どころである「第一白川橋りょう」も走れない。
誰もがあきらめてしまいそうな状況のなか、
それでも乗客を楽しませようと、一生懸命
観光案内しながら走る運転士さんの姿に
胸を打たれました。

そして2023年7月15日、
約7年3か月ぶりに南阿蘇鉄道は全線復旧！

たくさんの人たちの想いが繋（つな）いだ線路、
阿蘇の爽やかな風を感じながら、
ゆっくりと旅したいな。

文・写真／中井精也

1967 年、東京生まれ。鉄道写真家。独自の視点で鉄道を撮影し、『ゆる鉄』など新しい鉄道写真のジャンルを生み出した。甘党。著書・写真集に「1日1鉄！」（インプレス）など。2015年講談社出版文化賞・写真賞受賞。

（出典：「旅行読売」2023年8月号）

（Web掲載：2023年7月29日）