【乗車ルポ】九州を7日間かけて一周する贅沢な観光列車「36ぷらす3」がリニューアル
787系を使った「36ぷらす3」(写真は門司港駅にて)
曜日ごとにコースが変化、新個室で大分産のランチを味わう
数々の魅力的な観光列車を走らせるJR九州が2020年にリリースした、九州をぐるっと巡るD&S列車(※)「36ぷらす3」。高級列車として知られるクルーズトレイン「ななつ星in九州」を思わせる漆黒の6両編成が、このたびお色直しを終え、9月6日からの運行再開を前に試乗会が実施された。
<※D&S列車……JR九州では観光列車のことを「D&S列車」(ディーアンドエス列車)と呼び、「D」は特別な「デザイン」、「S」は沿線地域の歴史などの「ストーリー」を指す>
毎週日曜は大分発博多行きのコース。ランチ付きプランも(写真は6号車)
畳敷きのイス席から様変わりした6号車
当初のデザインから変わったのは、畳敷き+イス席だった6号車。パーテーションで緩やかに区切られたハイグレードな雰囲気の個室空間へと様変わりした。ゆったりと座り心地の良い座席が向かい合う形に配され、その間に木製テーブルが設置されている。シートのファブリックが全て異なる柄になっていたり、ガラスやゴールド、木質と、多様な素材に伝統工芸の技を組み合わせていたり、まさにコンセプトである「九州のすべてが、ぎゅーっと詰まった」を体現した内装だ。
全席、シートの柄が異なり、窓には障子(しょうじ)が
通路側のすだれを下ろせば、圧迫感のないプライベート空間を作れる
そもそも列車名からしてユニークなこの列車。「36ぷらす3」の36とは、九州が世界で36番目に大きな島であることからきており、そこに3を足して39にすれば、そのまま「サンキュー」に。九州の各地域やお客様への感謝を込めて走る列車なのだ。
木曜が博多-熊本-鹿児島中央駅(赤の路)、金曜が鹿児島中央-宮崎駅(黒の路)、土曜が宮崎-大分駅(緑の路)、日曜が大分-博多駅(青の路)、そして月曜は博多-佐世保駅(金の路)を往復する
今回の試乗会は日曜だったため「青の路(みち)」コースとなる。大分駅を出発し、日豊線を北上しながら博多駅を目指す。大分-博多駅間といえば、特急ソニックが最速2時間ほどで結んでいるが、「36ぷらす3」の同区間の所要時間はなんと約6時間。間に、杵築(きつき)・中津両駅ホームでのおもてなしや、門司港(もじこう)での自由散策も挟みつつ、ゆっくりと列車旅を楽しめるのだ。
787系特急列車時代のコンパートメントを活かした3号車個室
車イスにも対応できる2号車の個室
最もオーソドックスな5号車も心地良いゆったり座席
大分駅を出発して約1時間後に杵築駅に到着。ホームでは、さまざまな特産品を販売していた。この日は8月だったが、特産のみかんが売られていたので、車中のおやつにしようと三つ購入。とてもみずみずしく甘かった。こうした沿線地域によるおもてなしは、列車スケジュールに組み込まれている。聞けば、「36ぷらす3」が停車する日曜には、こうして準備して待ってくださっているのだとか。地元の方との触れ合いは、旅人の心を潤す。本当にありがたい。
ご当地の調味料や乾物、手作りおやつ、特産のハウスみかんなどが杵築駅ホームに並ぶ
車内で配布される専用リーフレットに、各停車駅でスタンプを押す
十数分後、列車は出発。30分ほどでもう一つの“おもてなし駅”、中津駅に入る。なんだかホーム上がごった返して賑わっている。大分県指定の無形民俗文化財の祭り「中津祇園」のお囃子(はやし)と稚児舞が盛大に出迎えてくれていた。中津駅長の横では、中津市公式キャラクター「くろかんくん」もお囃子に合わせて体を揺らしていて、思わず笑みがこぼれた。
列車の発車時、中津の皆さんが手を振って見送ってくれた
1〜3号車と6号車は、食事付きの「ランチプラン」を予約することで利用できる。中でも6号車は豪華になった内装とともにランチ内容も通常よりグレードアップ。「プレミアムランチプラン」として販売される。なお、5号車だけは食事なしでも利用可能だ。中津駅を出発してしばらくするとお待ちかねのプレミアムランチが運ばれてきた。
この大きなお弁当箱のような木箱がランチ。揺れる車内でも笑顔で丁寧に給仕するクルー
食事内容は曜日(コース)ごとに異なる。「青の路」コースのランチは、大分市の西大分駅から徒歩圏内にある隠れ家レストラン「RISTORANTE Oba(リストランテ オオバ)」のシェフによるもの。大分の恵みをふんだんにあしらった、美しい自然派イタリアンだ。
まるでからくり箱のように、箱の中から四つのお重が出てきた
アワビのソテーやオマールエビなど、選りすぐりの食材が
肉料理のお重。大分冠(かんむり)地鶏や奥豊後豚(おくぶんごぶた)の自家製ロースハムなど色々味わえる
食事を終えると、列車は北九州市内へ。4号車の「マルチカー」スペースでは、乗客向けの企画が行われた。「シュガーロードゆかりの『金平糖(こんぺいとう)』の紹介」というもので、無料で参加できる。現在も昔ながらの製法で金平糖を作っている北九州市内の老舗が紹介され、可愛らしい小箱に入った金平糖は、お土産として車内でも購入可能だ。
門司港駅停車中にレトロな港町を散策
列車は小倉駅を通過し、そのまま鹿児島線の起点である門司港(もじこう)駅に到着。国内外から多くの観光客が訪れる門司港レトロ地区が有名な駅だ。ここでは約1時間半停車し、乗客は改札を出て周辺散策を自由に楽しめる。もちろん車内に残ってゆっくりくつろいでもOK。徒歩圏内に見どころの多いエリアなので、お散歩気分で観光することができる。
国の重要文化財に指定されている門司港駅。周辺を見て回るだけでも、十分に門司港レトロ観光を楽しめる
3号車のビュッフェでドリンクや土産を物色。写真は宮崎の地ビールとのコラボ商品
今回のリニューアルを機に列車オリジナルグッズも新しくなった
門司港駅を出ると、もう一つの車内イベントが行われた。こちらは有料の企画で、400年の歴史を持つ「小倉織」の風呂敷包み体験というもの。繊細な織りによって作られる独特の美しい縞もようが特徴で、使用した風呂敷は持ち帰ることができる。
こうして、列車内でくつろぎ、地元のおもてなしを受け、絶品ランチを味わい、門司港を観光し、車内で伝統に触れていたら、6時間もあっという間。気がつけば終点、博多駅に到着していた。時刻は夕方5時前。ではここから、おいしい晩御飯を探しに、福岡のまちへ繰り出そうか。
文・写真/氏家 加奈子

「小倉織」の風呂敷包み体験
36ぷらす3
料金:日曜日ルート【青の路】ランチプラン(1〜3号車)24500円、プレミアムランチプラン(6号車)31000円、乗車のみ(5号車)10680円 ※いずれも大分・別府-博多間の1名料金
販売:乗車日の1か月前から公式ホームページで販売。食事付きプランの受付は乗車5日前まで
問い合わせ:℡0570-037-500(火曜休)
(Web掲載:2026年10月14日)


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