旅よみ 俳壇 旅行読売2026年12月号
神奈川県鎌倉市の報国寺の竹林(写真/ピクスタ)
【特選】
竹寺の竹のさやけし秋の風
◉横浜市 相沢恵美子
<評>秋の竹寺の空気感が良く表れている。例えば鎌倉の報国寺、歩く人の目線では青い竹の幹が続いているが、風が頭上の竹の葉を優しく吹き抜け、心地良い音を奏でる。風情を感じられる一句だ。
【入賞】
一握り星砂こぼす星月夜
◉練馬区 曽根新五郎
<評>星砂は沖縄などの砂浜で見られる。海洋性堆積物だが、その星形にロマンを感じる。星月夜の光との取り合わせが美しく響き合う。
AIに相談をして秋の旅
◉川崎市 柳内恵子
<評>今は何でもAIが答えてくれる。以前はガイドブックや地図を見て旅の計画を立てていたが、現代ならではの一句として面白さがある。
サイダーや天然芝のドッグラン
◉神奈川県中井町 笹尾雅美
<評>ドッグランで愛犬を自由に遊ばせているのか。ご自身は傍らでワンちゃんのパパママ仲間とサイダーを飲みながら寛(くつろ)ぐ景が見えてくる。
敗戦日遺産の畑へ鋤(すき)を打つ
◉岐阜県八百津町 細江隆一
<評>終戦の頃を思い出して詠んだ作品だろう。畑を継ぐ筈(はず)だった家族を戦争で亡くし、少年だった作者が鋤を打っている姿を想像した。
【入選】
正面に八ヶ岳(やつ)の雄姿や秋深む
◉京都市 福地秀雄
菊の綿兄弟喧嘩(げんか)まだできる
◉相模原市 妹尾茂喜
寂光院静かに白のさるすべり
◉伊予市 福井恒博
江田島に白き制服光る夏
◉吹田市 寺田登稔
翳(かげ)り咲く流人の島の野萱草(のかんぞう)
◉埼玉県吉見町 青木雄二
島影を飛び出す佐渡の大花火
◉市川市 井田千明
ぼんぼりの影たゆたひて風の盆
◉東京都中央区 豊澤佳弘
奥入瀬(おいらせ)の目覚の瀬音秋気満つ
◉足立区 太田君江
単線の行き違う駅草いきれ
◉鎌ケ谷市 藤本嗣子
秋風鈴山の古刹(こさつ)を彩りて
◉南魚沼市 堀口順子
【佳作】
美(ちゅ)ら海の八月の凪(なぎ)ひかり満つ
◉さいたま市 竹内白熊
一両の列車ゆるりと津軽かな
◉熊谷市 成田 暁
目も眩(くら)む竿燈(かんとう)闇をものとせず
◉大田区 豊島 仁
牛鬼が商店街を入りみだれ
◉松山市 友澤恭子
奥の院一人しずかに蟬しぐれ
◉姫路市 桜ほほ子
イリオモテヤマネコを見に天の川
◉杉並区 森 秀子
山間の流れゆるやか五月闇
◉行田市 根岸 保
ゆく夏の言問橋(ことといばし)をそぞろゆく
◉茨城県利根町 中澤則明
長崎の坂道ころがるくぬぎの実
◉江戸川区 岩井千恵子
競わずに生きる選択蝸牛(かたつむり)
◉神奈川県中井町 竹 和世

<選者>「天為(てんい)」編集顧問 天野 小石(あまの こいし)
東京都出身。「天為」の前編集長で、誌上選者を務める。俳人協会幹事。現代俳句協会会員。句集に『花源』がある。
天野小石先生の「総評」
今月から対馬康子先生から選者を引き継ぎました天野小石です。どうぞ宜しくお願いいたします。「旅よみ俳壇」は旅にまつわる題材はもとより、日常に根ざした作品も多く見られ、大変楽しく選句させていただきました。お一人お一人の俳句の背景にあるものを想像しながら鑑賞させていただいています。そういう読み手の想像を拡げてくれる作品を詠むことを心掛けてみることも、俳句を詠むことには必要です。有季定形を基礎として、ご自身の俳句世界を編んで下さることを期待しています。
天野小石先生のワンポイント俳句講座
「雪の俳句」
このワンポイント俳句講座では、その季節の季語について皆様と一緒に読んで行きたいと思います。「雪」に関わる季語は数多くあります。例えば「雪催ひせる庭ながら下り立ちぬ 虚子」「いくたびも雪の深さを尋ねけり 子規」「橇(そり)やがて吹雪の渦に吸はれけり 久女」などの季語を使った名句も挙げられますし、他にも初雪、粉雪、雪晴、雪女、雪国など、沢山の季語があります。自分が詠みたい雪の句にはどの雪の季語が適切か、よく考えることをお勧めします。
【応募方法】
旅で詠んだ俳句、風景や名所を詠んだ俳句をお送りください。特選句には選者の直筆色紙と図書カード、入賞句には図書カードを進呈します。応募には「月刊旅行読売」に添付の「投句券」が必要です。「月刊旅行読売」は全国の書店またはこちらの当社直販サイトで送料無料でお求めいただけます。
(出典:旅行読売2026年12月号)
(Web掲載:2026年10月28日)
※連載「旅よみ俳壇」トップページはこちら


Tweet
Share