驫木駅【五能線】
日本海の波音が響く五能線の難読・秘境駅
日本海を望む列車が恋しくなり、秋田と青森の沿岸を走る五能線に乗った。東能代(ひがしのしろ)駅を出た列車はしばらく田園地帯を進み、やがて左に大海原が見えてきた。右には世界遺産の白神の森。雄大でぜいたくな車窓が広がる。
海岸線を走る列車は、海が間近に迫る驫木(とどろき)駅に着いた。木造の小さな駅舎のほかに周囲には何もない。時おり聞こえるトビの声と打ち寄せる波の音だけが響き渡る。「驫木」の由来は、一説によると平安時代にこの地を訪れた花山(かざん)天皇の従者の馬3頭が波音に驚き暴れ出したことによるとか。
この駅に停まるのは、普通列車が上り下り1日各数本のみ。下車してしまうとかなり不便な秘境駅だが、訪れる価値は十分にある。五能線を北上すると車窓には白波立つ千畳敷海岸が広がり、旅愁はますます深まっていく。
文・写真/越信行
五能線は1936年全線開業。驫木駅は1934年開業。驫木駅へは東能代駅から五能線普通で2時間20分
(出典「旅行読売」2017年6月号)
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