見る者を圧倒! 地下50メートルの洪水防止施設「首都圏外郭放水路」
59本もの巨大な柱が立ち並ぶ調圧水槽。夏は靄(もや)がかかるという
トルコ・イスタンブールの地下神殿によく似た巨大な貯水槽が、春日部市の江戸川河畔、地下22メートルにある。東ローマ帝国の建築技術を用いた壮麗な大理石円柱が並ぶ彼(か)の地とは異なり、こちらは最新の土木技術で造られたシンプルなコンクリート柱。高さ18メートルもある流線形の巨大柱59本が、長さ177メートル、幅78メートルの広大な地下空間にシンメトリーを描いて屹立(きつりつ)する様は、非日常的で美しい。
異空間の設定でよく特撮ドラマや映画の撮影に使われ、資料館の「龍Q館(りゅうきゅーかん)」には撮影風景のスチール写真がたくさん飾られている。
首都圏外郭放水路は国交省が首都圏の総合治水対策の一環として平成18年に竣工した洪水防止施設。国道16号の地下50メートルに延長6.3キロ、内径約10メートルのトンネルを掘り、東端に「調圧水槽(ちょうあつすいそう)」と呼ばれる貯水槽を設けた。地下河川としては世界最大級だ。
所在地の埼玉県東部から東京都東部にかけては低地が続く。両側に東京・山手と千葉・北総の台地状に隆起した土地があり、挟まれるような恰好だ。春日部市で海抜7、8メートル程度。河川が多く、かつては梅雨時期や台風時には水害に悩まされた浸水地帯だった。
現在は中川や倉松川など周辺河川が増水すると、5か所にある巨大な縦穴「立抗(たてこう)」に水が流れ込み、地下放水路(トンネル)を通って調圧水槽に貯められる。立杭とトンネル部も含め、貯水量約67万立方メートルは小規模なダム並み。その後、併設する排水機場のポンプ設備4台で、江戸川に排水する仕組みだ。この対策により浸水被害は格段に減ったという。
「龍Q館前のサッカーグラウンドの真下がまるまる調圧水槽。見学会では、地下神殿コンシェルジュの案内のもと、屋外の入り口から階段を100段ほど下り、調圧水槽を見学する。