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日本最北の城下町に咲く1万本の桜

場所
> 松前町
日本最北の城下町に咲く1万本の桜

濃淡のある桜色に彩られる天守(写真提供/松前町教育委員会)

 

 

北海道最南端の松前へ

江戸時代に北前船が行き来し、日本最北の城下町として栄えた松前は、今では多種多様な桜が咲き継ぐ「さくらの里」としても人気を集めている。北国に訪れる春を待って、歴史のドラマと移ろう季節を感じる旅に出てみたい。

北海道最南端に位置する松前町へは、函館空港から車で2時間半。現代人は飛行機や車でアクセスするが、往時の交通手段は船だ。本州に最も近く、日本海側と太平洋側の海運の結節点にある松前には、人とモノが集まった。そして多くの船が渡る津軽海峡を望み、海岸段丘の突端を利用して築かれたのが、松前城(福山城)である。

1853年建造の本丸御門は国の重要文化財に指定されている(写真提供/松前町教育委員会)
1853年建造の本丸御門は国の重要文化財に指定されている(写真提供/松前町教育委員会)

天守から海を一望

日本近海に外国船が現れたため幕府から松前藩に築城が命じられ、1854年に完成。江戸初期に建設された藩主の居館・福山館を拡張したもので、海に向けて7基の台場が配されたという。しかし明治期の戊辰戦争では、土方歳三率いる旧幕府軍に搦手(城の裏方)から攻められ落城。1960年再建の天守を支える石垣には、今も砲弾痕が残っている。天守の内部は資料館になっていて、最上階から望む海は青々として美しい。

天守内部の資料館は地下1階、地上3階。最上階からの海の眺め(写真提供/松前町教育委員会)
天守内部の資料館は地下1階、地上3階。最上階からの海の眺め(写真提供/松前町教育委員会)

お気に入りの桜探し

さらに松前の歴史に浸るなら、松前城から徒歩15分ほどの松前藩屋敷に足を延ばそう。海の関所「沖之口奉行所」や武家屋敷など14棟が再現され、歴史ガイドや体験メニューも用意している。

松前城と五つの寺社がある寺町、松前藩屋敷を含む一帯は松前公園として整備され、広さ21ヘクタール。春になると250品種、1万本の桜で華やぐ。早咲きのソメイヨシノや南殿から遅咲きの関山や普賢象まで、花見が楽しめるのはおよそ1か月。天守と桜を写真に収めたり、三大名木を巡ったり。全国から収集された桜や松前で作られた桜が集まる「桜見本園」で、お気に入りの一木を探すのもいい。

桜のトンネル。桜見本園と新桜見本園は「生きた桜図鑑」と称される(写真提供/松前町商工観光課)
桜のトンネル。桜見本園と新桜見本園は「生きた桜図鑑」と称される(写真提供/松前町商工観光課)

道の駅で松前本マグロ丼を

町の中心部を走る城下通りには、老舗の菓子店や土産店が点在。松前ならではの海の幸を楽しむなら、海沿いに立つ「道の駅 北前船松前」へ。松前本マグロ丼や松前岩のり段重が味わえるほか、テラスからは津軽海峡と対岸の青森県が一望できる。


文/内山沙希子

江戸時代の町並みを再現した松前藩屋敷(写真提供/松前町商工観光課)
江戸時代の町並みを再現した松前藩屋敷(写真提供/松前町商工観光課)
松前城の御城印
松前城の御城印

松前城
住所:松前町松城144
交通:北海道新幹線・道南いさりび鉄道木古内駅からバス1時間30分、松城下車徒歩10分
TEL:0139-42-2216(松前城資料館)


(出典:「旅行読売」2022年4月号)

(WEB掲載:2022年4月2日)



Writer

内山沙希子 さん

京都生まれ。本や雑誌を作る仕事を求め、大学在学中に上京。その後、美術館やレストラン、温泉宿、花名所、紅葉名所等のガイドブックを中心に、雑誌や書籍の企画・編集に携わる。2017年頃から月刊「旅行読売」で原稿の執筆を開始。「旅行読売」での取材を通して、鉄道旅に目覚めるかどうかは未知数。

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