ありたさんぽ ~有田焼の雛が春を呼ぶ~
町内各所の雛のやきもの展示をはじめ、着物の着付け体験、限定ランチなど多彩なイベントを用意。
日本で初めて磁器が焼かれた有田では、四季折々に「やきもの」イベントを開催。冬から春には有田焼の雛人形が町内各所に飾られ、にぎわいを見せる。
第19回 有田雛のやきものまつり 2023年2月4日~3月12日開催
佐賀県西部の有田町は誰もが知る有田焼の名産地。17世紀初頭、朝鮮人陶工の李参平らによって、ここ有田の泉山で原料となる陶石が発見されたことで、本格的な産業磁器生産が始まったとされる。質の高い陶石から作る有田焼は、国内はもとより欧州などで絶賛され、400年の歴史を築くに至った。
そんな有田の春を先取りするにぎやかな祭りが「雛(ひいな)のやきものまつり」だ。町内各所に有田焼のお雛様が飾られる。2023年で19回を数え、いまや町の風物詩となった。雛祭りは各地にあれど、焼き物の雛祭りは全国的にも珍しい。
有田観光協会が入る有田館では著名な柿右衛門窯、香蘭社、そしてドイツのマイセンの作となる雛人形が飾られる。
郊外にある有田焼のショッピングモール・アリタセラでは2.7メートルの雛壇高を誇る7段飾りが見学できる。「絵付けによる着物の細かい柄や一体ずつ違う顔の表情など、有田焼の技術の高さを見て頂きたいですね」と観光協会の岩﨑信介さんは笑顔で語る。7段飾りは、屏風以外の細かな造作もすべて有田焼で、実に3年がかりで制作されたという。
やきものの町で雛に出会う
有田の中心地である内山地区は、江戸、明治、大正、昭和、それぞれの時代に建てられた白壁土蔵や黒漆漆喰の商家が残る。洋館もあり、この町が過去の一時代ではなく、連綿と長きにわたり栄えてきたのだと気付く。裏通りを埋めるトンバイ塀も見逃せない。
普段は静かな町並みだが、祭りの期間中は窯元や商店の店先で有田焼の雛が出迎え、華やいだ雰囲気に。愛らしい姿に思わず笑みがこぼれてしまう。
「購入できる雛人形もあるので、お土産にもぴったりですよ」と岩﨑さん。祭りに合わせて有田館では着付け込みでの着物の貸し出しも行う。着物での雛めぐりは”SNS映え”するとあって人気が高い。
器を極めた町は、食の名店もそろう。期間中に実施される「ひいなランチ」でグルメさんぽを楽しむのもいい。町内の20店舗以上で限定メニューが提供され、川魚料理、そば、寿司、カレーなど各店こだわりの一品を味わえる。器はもちろん有田焼だ。
食後は有田焼の鳥居で知られる陶山神社に参り、穏やかな春の訪れを祈りたい。
有田焼400年の歴史が息づく内山地区
陶山神社
有田皿山代官の命により、1658 年に社殿を建立。「やきものの神様」として親しまれ、鳥居や狛犬、お守りも有田焼と個性的だ。有田焼をモチーフにした白地が美しい御朱印帳も人気を集めている。
拝観自由/TEL:0955-42-3310
手塚商店
内山地区にある、大正時代に建てられた黒漆喰の壁が美しい豪奢な二階建ての商家。若手作家の作品を扱うギャラリーで、雛のやきものまつり期間中には手塚家に代々伝わる雛人形の人形が座敷いっぱいに飾られる。
10 時~17 時/不定休/TEL:0955-42-2018
有田の「おいしい」を見つけよう
川魚料理 龍水亭
1921 年創業、川魚料理の老舗料亭。コリっとした歯応えが魅力の鯉のあらい、自家製の天然醸造味噌を使った鯉こく、鰻料理が有名だ。コース料理は鯉のあらい、鯉こくなどが並ぶ有田コース(3509円)から各種がそろう。
11時30分~15 時30 分(最終入店14 時)、16時30 分~21 時30分(最終入店19時) /水曜休(祝日の場合は営業)。不定休あり/TEL:0955-46-2155
宗政酒造
清酒「宗政」や本格焼酎「のんのこ」で知られる。地元佐賀産の山田錦や二条大麦を用いた真摯な酒造りが身上だ。「インターナショナルワインチャレンジ2021」で金賞を受賞した「宗政 純米吟醸-15」が話題に。「西九州新幹線開業記念ボトル佐賀の地酒3本入セット」(3000円)も人気だ。有田ポーセリンパークに隣接する有田蔵などで販売している。
TEL:0955-41-0030
【内山地区までのアクセス】
佐世保線上有田駅、有田駅(松浦鉄道)などを利用。西九州道波佐見有田ICから約5キロ
【観光に関する問い合わせ】
有田観光協会 TEL:0955-43-2121 詳しくはこちらのサイトへ
(出典:「旅行読売」2023年2月号)
(WEB掲載:2023年1月13日)