兄畑駅【花輪線】
八幡平山麓の小駅で出合った名もなき桜並木
山あいの温泉につかろうと、北東北の玄関口、盛岡駅から花輪線に乗り込んだ。愛称は「十和田八幡平四季彩(とわだはちまんたいしきさい)ライン」。四季折々の風景が魅力的な路線だ。
岩手山、八幡平、安比(あっぴ)高原の雄大な景色を眺めながら、谷間へと進んでいく。小さな駅を彩る桜並木が目に留まり、ふと降り立った。
下車した兄畑(あにはた)駅は、黒い板塀に三角屋根の小さくてかわいらしい駅舎だった。駅前からは県境を成す高畠山を望む。駅舎の背後に連なる桜並木はかつてのホーム跡の脇に続く。駅前ではヒメオドリコソウの群落が紫色の花を咲かせ、まさに春爛漫(はるらんまん)の様相だ。
思いがけず出合ったローカル駅で東北の遅い春を満喫し、隣駅の湯瀬温泉を目指して兄畑駅をあとにした。
文・写真/越信行
花輪線は1931年に全線開通、兄畑駅は同年開業。兄畑駅へは盛岡駅からIGRいわて銀河鉄道経由花輪線普通列車で1時間40分
(出典 「旅行読売」2015年4月号)
(ウェブ掲載 2019年11月1日)
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