群馬県南部、高崎市や前橋市に隣接する玉村町には際立った特徴がある。それは「肉」。わが国で唯一の公的な職業能力開発校である全国食肉学校があり、全国の名だたるレストランや料亭などから「肉」を学ぶために学生が集まる。

同校は全寮制で、3か月、6か月、１年の3コースがあり、肉のスペシャリストを養成する。具体的には、解剖学や食肉衛生など食肉取り扱いをはじめ、枝肉の処理技法、原価計算や畜産経営の実践など経営管理の学科のほか、枝肉処理や食肉加工の実習を行う。1年コースの訓練は1720時間に及び、在学中に食肉処理製造技術や食肉販売技術管理士の資格を取得することもできる。

普段あまり見られない食肉処理の様子を特別に見学した。同校の北沢優一教務部長がフックで吊られた豚枝肉に一礼してから作業が始まった。「家畜からいのちをもらうことへの感謝の気持ちです」と北沢さん。特殊な包丁を使い、骨を避けて切り分けていく。

ある程度の大きさになったら台に載せ、骨を丁寧に外していく。包丁は手前に引くことが多いため、作業者は万一に備え手首を保護するカバーを装着し、上半身の前面は鎖かたびらのような防具を身につけている。重労働の上、危険も伴うが、職人は5分ほどで作業を終えるという。「骨が入り組んでいて機械での作業はしにくいため、人の手による仕事がいいのです」と常務理事の小原和仁さんが説明してくれた。

全国食肉学校で作られたベーコンは町内の「肉の駅」に並ぶ。肉の駅本店は全国食肉学校の近くにある群馬県食肉卸売市場に隣接しており、コロッケやメンチカツなどは揚げたてを購入できる。

熟成ベーコンは群馬県産の豚肉に塩せき剤を手作業ですり込んで2週間熟成させたもの。肉の風味がしっかりしており、加熱しなくてもおいしく食べられる。日本で初めて開催されたＤＦＶ（ドイツ食肉連盟）主催のＩＦＦＡ「日本食肉加工コンテスト2019」において、全国食肉学校のベーコン、ロースハム、あらびきソーセージはいずれも金賞を受賞した。

肉の楽しみ方はこれだけではない。町内の「寿司けん」には寿司や海鮮丼のほか、肉のメニューがある。上州牛がのった牛ももにぎり（8カン1243円）や上州牛サーロインと酢飯の相性がいい素敵な寿司（2607円）はサシがとろけるよう。上質な肉であるのに、リーズナブルなのもうれしい。

カフェ＆バル ディアーナの看板メニューは100％ビーフのハンバーガー（880円、ポテトと飲み物付き）。全粒粉無添加のバンズで100％ビーフやレタス、アボカド、トマト、タマネギをはさみ、ボリュームたっぷりだ。

土産は関越道の高崎玉村スマートICの隣にある道の駅玉村宿で求めたい。施設内には肉の駅もあり、本店同様に上州牛や上州麦豚など銘柄肉のほか、揚げたてのコロッケなどが並ぶ。玉村町産を中心とした野菜も豊富で、すき焼きの食材をそろえられる。

道の駅玉村宿はETC2.0の社会実験対象駅になっていて、ETC2.0搭載車は高崎玉村スマートICを途中下車して再度利用しても初乗り料金がかからない。「玉村町の肉」を目的に気軽に立ち寄れる。

全国食肉学校　
TEL 0270-65-2571

肉の駅本店
9時30分～19時／火曜休
TEL 0270-65-2550

寿司けん
11時～14時、17時～21時／月曜休（祝日の場合は営業）
TEL 0270-64-4884

カフェ＆バル ディアーナ
11時30分～15時／月曜休
TEL 0270-64-3292

道の駅玉村宿
9時30分～19時（2020年2月29日までは～18時30分）／第3水曜、年末年始休
TEL 0270-27-6688