【旅する喫茶店】珈琲館 蔵(福島)
梁(はり)がむき出しで天井が低い2階席。堅牢な蔵の面影が強く残っている
観音菩薩に見守られ、半世紀の歴史
会津若松市の中心部にある珈琲館蔵は文字通り、1876年築の米蔵を改装した喫茶店だ。開業は約50年前。当時はリノベーションの先駆けとして注目を集めたという。
店を開いたのは現店長・木村しほみさんの父。「手先が器用だったので、自分で何でも作り、蔵を改装しました。会津人は凝り性とも言われますが、父はその典型的な人だったのでしょう」と、しほみさんは語る。
レンガ造りの門から蔵へ続くスペースに入るとすぐに、その〝凝り性〟を実感できる。古い民具を再利用してコツコツ作ったという什器(じゅうき) の象徴が、大八車を転用したという丸テーブル。半世紀も前からの物とは思えないモダンさも備えている。なぜかアメリカの航空機やクルマ、バイクなどの模型が並び、洋風の古い旅行鞄(かばん)やシルクハットもさりげなく置かれているが、物選びのセンスが良い。

蔵の奥に進んで驚いたのは、一角に鎮座する高さ4メートルの観音菩薩(ぼさつ)。カウンター席の向かいには囲炉裏の席もある。2階席は隠れ家のような趣。ステンドグラスが輝き、年代物のピアノも置かれている。ジャンルの異なるものが一つの空間にありながらなぜか違和感がない。その配置もまた先代の凝り性の賜物(たまもの)ではないだろうか。創業時からの一品というパングラタンと、裏磐梯(ばんだい)に湧く地下水がまろやかな風味を醸(かも)すコーヒーを味わいながら、そんなことを考えた。


文/渡辺貴由 写真/齋藤雄輝
福島県会津若松市中町4-20
TEL:0242-28-0511
営業:10 時~ 20 時(季節により異なる)/不定休
交通:只見線七日町駅から徒歩15 分
※記載内容は掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2026年3月号)
(Web掲載:2026年3月17日)


Tweet
Share