【日本の祭り】初夏を告げる山の幸を屋台村で味わう「野沢温泉たけのこまつり」(長野)
提灯をともす屋台村が10日間の夜だけ出現
長野県野沢温泉村で、初夏の風物詩といえば「野沢温泉たけのこまつり」だ。2026年は6月12日〜21日(18時30〜20時30分)に温泉街で開催される。会場は河原湯(共同湯)裏側の路地で、ノスタルジックな提灯(ちょうちん)が下がる通り沿いに、たけのこ料理や村内で製造するクラフトビール・ジンなどの酒類を販売する約15の屋台が並ぶ。
“たけのこ”といっても一般的な孟宗竹ではなく、どの屋台もネマガリダケを使うのが約束事になっている。26年は定番のたけのこ汁、たけのこご飯をはじめ、天ぷら、焼きそば、ピザ、カレー、豚軟骨煮、ホルモン焼き、日替わり中華などが提供される予定だ。
「会場では1綴り2000円で2200円分利用できる“たけのこクーポン”や現金を使って料理やお酒を購入し、テーブル席で楽しくいただきます。地元同士はもちろん、相席になった観光の方とすっかり仲良くなり二次会へ行ったという話もよく聞かれますよ」とは野沢温泉村観光産業課長の富井健一さん。かくいう私(著者)もその一人である。



長野県北部震災後に“元気を出そう”とスタート
「野沢温泉たけのこまつり」は2011年にスタートした。そう、東日本大震災が発生した年である。長野県北部も東日本大震災の翌日(3月12日)に大地震が発生し、野沢温泉はスキー場の格納庫にあったゴンドラがレールから落ちるなどの被害があり、観光客が激減した。「そんな状況でも応援してくださる方々への感謝と、何より地元の方々に元気を取り戻してもらおうと、たけのこまつりが企画されました」(富井さん)
当初は現在の野沢温泉観光案内所の駐車場に、いくつかの屋台が並ぶ程度だったが、回を重ねるごとに、村内の飲食店でたけのこ料理を提供したり、旅館・ホテルではたけのこクーポン付きの宿泊プランも用意したりと、村全体のイベントに成長してきた。現在の場所で開催されるようになってから、たけのこまつりを盛り上げるアトラクションもスタート。26年は道祖神太鼓演奏(6月12日・20日19時30分〜)、小唄保存会のパフォーマンス(6月13日・19日19時30分〜)、野沢温泉スキー場・長坂ゴンドラリフトの特別運行(6月13日〜21日の9時〜16時。下り最終16時30分)などを実施する。


ネマガリダケは笹薮に分け入って収穫する貴重品
たけのこまつりで使われるネマガリダケは、どのように収穫するかご存知だろうか? 3年ほど前に、山の名人に連れられてネマガリダケの収穫を体験したが、その過酷さには閉口した。ネマガリダケはチシマザサの新芽で、地域によってはヒメダケとも呼ばれる。チシマザサは山岳部の急斜面に群生し、親笹になると大人の背丈ほどの高さになる。
肌を晒(さら)さない服装に、ゴム長靴、手袋、ヘルメットを装着して、笹薮をかき分けて進む。油断すると親笹がはね返り、体に当たると痛いのなんの。ヘルメットの重要性がよくわかった。大汗をかきながら進むと、ほどなく親笹の根本に高さ20センチほどの新芽を発見! 指でつかみ奥に傾けるとポキっと摘み取れた。
体験後、ネマガリダケの下処理を見てまた驚いた。皮をむいたあと、節の部分は食感が硬いことから切り捨ててしまうのだ。実際に食べられるのは3分の1くらいだろうか。最後に山の名人が「我が家のたけのこ汁ですが、よかったらどうぞ」と手渡してくれたお椀にはネマガリダケがてんこ盛り。シャキとしたネマガリダケの食感とともに、惜しみなく貴重品を振る舞う名人の心意気に感動した。
そうした想いは「野沢温泉たけのこまつり」の屋台村も同じ。もてなしの心が詰まった料理と心地よい雰囲気を味わい、思い出に残る一夜を過ごしたい。
文/内田 晃 写真/野沢温泉マウンテンリゾート観光局・内田 晃
【名称】野沢温泉たけのこまつり
【会場】川原湯路地裏
【交通】北陸新幹線飯山駅から直通バス25分、野沢温泉下車徒歩5分
【問い合わせ】0269・85・3155(野沢温泉観光案内所)

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