【旅する喫茶店】南珈琲店(香川)
シックな印象の店内。喫煙も可能で、煙草をくゆらしながらコーヒーを味わう人も
商店街に漂う〝想い出のいぶし香〟
アーケードの総延長が日本一と言われる高松中央商店街。その一部である南新町商店街に、高松市民が熱く語り続ける伝説のような店がある。創業は1975年。1日に400人もの客が来るという南珈琲(コーヒー)店だ。
階段を上り2階の店内に入ると、聞きしに勝る繁盛ぶり。焦げ茶色の重厚なカウンターに客が並び、ボックス席もほぼ埋まっていた。運良く空いた席に座る。初めてなのに長年通っているような既視感が不思議だ。
ブレンドコーヒーは今どき珍しい350円で、店内焙煎(ばいせん)の深煎(い)り豆を使う。「うちのコーヒーは濃くて苦い。それは分かっとんのやけどね」とマスターの南憲治さん。78歳の今も1日に約8回、早朝から深夜まで焙煎機を操るそうだ。「焙煎はやってもやっても満足できないし、〝今度こそ〟と毎回思っています」と話す。

11時までのモーニングタイムは、コーヒーに厚切りトーストが無料で付いてくる。サービスされるのはホテル用の高級食パンで、口に入れると香ばしい小麦の風味。ちょっと驚いて無料の理由を聞くと、「感謝の気持ち」と目を細めて答えてくれた。おかげで朝から満たされて、高松の街をさらに好きになる。
メニューの裏には、マスターが書いた詩があった。〝熱い珈琲をのぞく時 部屋の片すみは想い出のいぶし香に満たされる〟。ほろ苦いコーヒーに詩を重ねて味わうと、妙に沁(し)みた。


文/北浦雅子 写真/泉田道夫
香川県高松市南新町3-4 南ビル2階
TEL: 087-834-2065
営業:7 時~ 20 時/無休
交通:ことでん瓦町駅西口から徒歩5分
※記載内容は掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2026年2月号)
(Web掲載:2026年2月14日)


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