根府川駅【東海道線】
水平線から昇る朝日が海も駅舎もオレンジ色に染める
熱海温泉からの帰りに、朝日を見たくて始発列車で根府川(ねぶかわ)駅へ向かった。「関東の駅百選」に認定された駅は海を望む斜面の中腹にあり、日の出を目当てに訪れる人も多い。
まだ薄暗いホームに降り立ち駅前へ。跨線橋脇にある木造駅舎は、関東大震災の土石流災害の翌年、1924年に建てられたものだ。現在は無人駅だが、1973年に当時の駅職員によって設置された「関東大震災殉難碑」が残る。
やがて辺りは明るくなり、昇る朝日が駅舎を染めていく。改札口の先に広がるオレンジ色の大海原は、絶景と呼ぶにふさわしい。
ミカン畑が広がる斜面を下り米神(こめかみ)漁港へ。町の一角にある豆相人車鉄道(ずそうじんしゃてつどう※注)米神駅跡のプレートが、この地の歴史を物語る。漁港にたたずみ海を眺めていると、心地よい海風が春を告げていった。
文・写真/越信行
※注……1895年に熱海-吉浜駅間で営業を開始した、人間が客車を押すという鉄道(翌年に小田原まで開通)。1907年に蒸気機関車牽引の軽便鉄道(熱海鉄道)となった。
東海道線は1889年に全線開業、根府川駅は1922年開業。根府川駅へは小田原駅から東海道線普通で7分
(出典「旅行読売」2017年3月号)
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