佐久広瀬駅【小海線】
稲刈りが終わり、谷あいの小駅は秋模様
日本の鉄道最高所地点(清里―野辺山駅間)を通過した小海線の列車は、一気に山を駆け下りていく。信濃川上駅を過ぎると、今度は千曲川(信濃川)に沿って田園地帯をゆるやかに下っていく。佐久広瀬(さくひろせ)駅はその谷間にあり、すぐそばまで川が迫る。
駅舎は、ベンチが置かれただけの小さな造り。その脇から見えるのは、千曲(ちくま)川の清らかな流れと秋色の山肌、駅へ通じる道沿いの段々畑だけだ。
駅から高台へ上ると、ようやく集落が見えてきた。稲刈りが終わった田んぼとハサ掛けされた稲、背後には埼玉・長野県境の三国峠に連なる山並みが続き、その中を列車が縫うように走る。絵に描いたような日本の原風景が広がっていた。
振り返ると、谷間にたたずむ小さな駅舎も秋景色に包まれていて、なぜだかかわいらしく思えた。
文・写真/越信行
小海線は1935年全線開業、佐久広瀬駅も同年開業。佐久広瀬駅へは、小淵沢駅から普通50分。
(出典 「旅行読売」2018年10月号)
(ウェブ掲載 2020年10月4日)
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