何度も乗りたくなる魅力ぎっしり リゾートしらかみ(1)
海岸線を走るリゾートしらかみ・橅(ブナ)編成の秋田行き。青森行きでは進行方向左の車窓に海が見える
日本の観光列車の先駆け
五能線は「おすすめローカル線ランキング」で必ず上位に入る人気路線だ。北東北の日本海沿いのダイナミックな車窓風景はもちろん、快速列車「リゾートしらかみ」の評判の良さも人気の大きな理由だろう。今でこそ地方路線の活性化に観光列車を走らせるのは広まってきたが、「リゾートしらかみ」が運行を始めたのは20年以上も前のこと。日本版の観光列車の先駆けといえる。
五能線全通80周年に当たる2016年の夏、「橅(ブナ)」編成の新型車両が投入された。2010年の新型「青池」に続くディーゼルハイブリッド気動車で、車内に物販カウンターを設け、より観光列車らしい造りに変身した。これに「くまげら」を加えた3編成が秋田ー青森駅間を運行している。今回は五所川原観光に都合がいい秋田発の「橅」編成に乗った。
車内カウンターで地酒におつまみ
秋田駅を8時20分に出発したリゾートしらかみは男鹿(おが)半島への分岐点である追分駅を過ぎ、八郎潟(はちろうがた)の広大な雪原を見ながら北上。奥羽線との境である東能代(ひがしのしろ)駅で進行方向を変え、ここから五能線に入る。
「橅」の車体は旧型を踏襲しつつ、グラデーションでブナ林を描いている。4両編成の1・4号車と3号車の一部が2列+2列のリクライニング席、2号車が仕切りのあるボックス席で、全席指定。運賃に座席指定料金530円で乗れる。車両デザインはJR東日本のクルーズトレイン四季島(しきしま)を手がけた奥山清行氏。カウンターに青森ヒバ、照明器具にブナ、天井や床に秋田杉を使い、手作り感のある温かみと洗練が共存している。リクライニング席は前後の間隔が広く、足をのばせる。窓も広い。ひと言でいえばとても快適だ。
非電化区間の五能線は基本的にディーゼル車が運行するが、新型車はこれにリチウムイオン蓄電池を組み合わせたハイブリッド気動車。とはいえそれなりに揺れるが、これもローカル線らしくて心地がいい。
新型「橅」の一番の特徴は、初めて設置された3号車の「ORAHO」カウンター。沿線の特産品や地酒・地ビール、各種グッズを販売している。ここで秋田の純米吟醸「津月」と駅弁「白神そだち あわび五能線弁当」、ホヤのひもの、しょっつる風味のあたりめを買い込んだ。
文・写真/福崎圭介