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ツアーならではの魅力満載! いすみ鉄道と小湊鐵道 鉄印帳の旅(2)

ツアーならではの魅力満載! いすみ鉄道と小湊鐵道  鉄印帳の旅(2)

2020年に始まって以来人気の「鉄印帳の旅」。全国の第三セクター鉄道会社40社の鉄印を集めるには、自由に動ける個人旅行の方がスケジュールを立てやすい……そんな風に思っている方も多いのでは? 

読売旅行はシーズンごとに「鉄印帳の旅」を組み込んだ鉄印帳ツアーを企画、実施している。ツアーだからこそ入れる場所や体験できることがあり、効率よく見所を回れるのも特長だ。今回、鉄道カメラマンの伊藤岳志氏に、事前にコースをたどって、その魅力を体感してもらった。


本記事で紹介している鉄印帳ツアーの詳細はこちらから


小湊鐵道で房総の秘境へ

上総中野駅は、東側のいすみ鉄道と西側の小湊(こみなと)鐵道の接続駅だ。それぞれ専用ホームがあり、昔ながらの地上通路で結ばれているのが味わい深い。その通路から眺める両鉄道の列車が並ぶシーンは、地方鉄道全盛期の雰囲気が感じられて実に良いものだ。ここで小湊鐵道に乗り換えてさらに西を目指す。

小湊鉄道(右)、いすみ鉄道(左)が停車する上総中野駅


まずは10時33分の列車で隣の養老渓谷駅へ。養老渓谷は房総の秘境といわれる場所で、養老川によって削り取られた渓谷沿いには温泉や美しい滝が点在し、房総を代表する観光スポットにもなっている。その最寄り駅である養老渓谷駅に、列車は10時43分に到着。ここで秘境探訪と昼食を兼ねた約1時間40分の自由散策タイムとなる。

養老渓谷温泉で日帰り入浴を楽しむのも良いが、今回はさらに足を伸ばして、養老の滝とも呼ばれる粟又(あわまた)の滝を目指した。駅前の観光案内所にはレンタサイクルもあるが、滝まで片道約10㌔あり、アップダウンも激しいのでタクシーを使った。粟又の滝の入り口にある秘境の宿滝見苑に約15分で到着。この周辺には食事処もあるので昼食にも不自由しない。ここから滝まで行きは約5分、帰りは急な上り坂となるので15分ほど見ておいたほうが良い。粟又の滝の流れは実に優雅で、周辺の紅葉も進む11月下旬は一年の中で最も美しい時期の一つだろう。

優雅な流れを見せる粟又の滝

開放感抜群のトロッコ列車で里山の風景を満喫


養老渓谷駅に戻ると、駅で待ち構えているのは小湊鐵道名物の「房総里山トロッコ号」だ。2015年から運転を開始したこの列車は、かつて同社で活躍した小型蒸気機関車を模したディーゼル機関車が、開放感満点の可愛らしい小型客車を牽引する、まるでおとぎの国から飛び出してきたような観光列車だ。今ツアーでは、この列車を始発の養老渓谷駅から終点五井駅までたっぷりと楽しめる。

12時50分に養老渓谷駅を発車。通常の列車では五井駅まで1時間少々の所要時間だが、「房総里山トロッコ号」はたっぷり2時間かけて走る。そのため歩みはスローで、のんびりとした揺れに身を任せてじっくりと風景を楽しめる(今ツアーでは窓無し車両に乗車するので防寒対策を忘れずに)。

小湊鉄道の名物「房総里山トロッコ号」

小湊鐵道には、沿線風景とともに魅力的な駅が多く、映画やTVドラマに登場することも多い。その代表が上総鶴舞(かずさつるまい)駅で、味わい深い木造駅舎と、ゆるくカーブした広々とした駅構内とのコンビネーションが実に魅力的だ。また飯給(いたぶ)駅は、桜の時期のロケーションが素晴らしく、春には大勢の観光客が訪れる。そして広大な囲いの中にガラス張りのトイレがポツンと置かれた女子トイレも同駅の名物となっている。残念ながら両駅とも通過扱いだが、車内からその様子を楽しんでみてほしい。

レトロ感満点の五井機関区を見学

「房総里山トロッコ号」は14時55分に五井駅に到着。ここで一旦改札を出て駅の東口へ向かう。いよいよ今ツアー二つ目の目玉である小湊鐵道五井機関区の見学会だ。通常は非公開である検修庫など、内部をじっくり見学できる機会はなかなかないだけに胸が高まる。機関区の入り口は、近年オープンした「こみなと待合室」(後に詳細解説)のガーデンの先にあり、ここから小湊鐵道の案内係さんの先導で機関区構内へ入る。キハ200形やキハ40系を間近に眺めながら機関庫に到着後、小湊鐵道随一の解説上手で豊富な鉄道知識を持つ、鉄道部車両工務課の荒井康伸さんが庫内を案内してくれる。

いざ五井機関区構内へ
小湊鐵道鉄道部車両工務課の荒井康伸さんが案内してくれる


五井機関区の検修庫は昔ながらの木造建築で、天窓から差し込む優しい光が実に美しい。庫内には車両を持ち上げるジャッキや、整備中のエンジンや台車といった、普段間近に見ることができない大型の鉄道関連部品が置かれている。そして木目が美しい側壁には、使い込まれた工具や部品が鈍く光る。かたわらには古い車両のヘッドライトを流用した照明もあり、荒井さんはそういった部品についても細かく説明してくれる。

検修庫全景。ここで車両のメンテナンスなどが行われる


そして最大のお楽しみは、機関区に留置してある車両の撮影会だ。運用の都合で車種はランダムになるものの、ツアーでも、最近導入されて話題の元JR東日本キハ40系を撮影できる可能性が高い。今回の取材で、キハ200形のエンジンを車内から見学するというマニアックなイベントも実施されたように、サプライズ企画もあるかもしれない。また機関区内には、大正時代に製造され、市原市の指定文化財にもなっているキハ5800形や、創業時に活躍した蒸気機関車も保存されているので忘れずに見学したい。

今回の取材ではキハ200形のエンジンを車内から見学
小湊鐵道創業時に使用されていた蒸気機関車

「こみなと待合室」でくつろいで帰路へ

五井機関区見学会は約1時間で終了。その後にぜひ立ち寄りたいのが「こみなと待合室」だ。おしゃれでどこか懐かしい雰囲気の建物は、実は小湊鐵道の会議室を改装したものだそうだ。店内にはカフェ、土産売り場、情報コーナーがあり、「待合室」という名の通りにカウンタースペースの利用や出入りは自由だ。ここではぜひトレインビューのカウンター席かガーデン席に座り、おいしいコーヒーを飲みながら旅の余韻に浸ってほしい。なお、おすすめの食事メニューはクロワッサンサンド・テリヤキチキン(税込み440円)。機関区見学後の小腹を満たすのにちょうどよいのではないだろうか。

五井機関区に併設されている「こみなと待合室」では、コーヒー・紅茶や、サンドなどのフードのほかアルコールの提供も


帰路はJR五井駅17時09分発の特急「新宿さざなみ」4号に乗車し、終点の新宿駅には18時07分に到着。鉄印はもちろん、トロッコ乗車に機関区見学、ご当地グルメ、自然散策もあり、楽しくバラエティーに富んだ日帰り鉄道旅は終了となった。

文・写真/伊藤 岳志


本記事で紹介した鉄印帳ツアーの詳細はこちらから

 



(WEB掲載:2021年10月21日)




Writer

伊藤岳志 さん

1969年、神奈川県生まれ。鉄道、車、バスなどさまざまな乗り物の撮影を手がける。著書に「さらば栄光のブルートレイン」(洋泉社)など

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