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【ロープウェイで夏絶景へ】中央アルプス 駒ヶ岳ロープウェイ

場所
  • 国内
  • > 北陸・中部・信越
  • > 長野県
> 駒ケ根市
【ロープウェイで夏絶景へ】中央アルプス 駒ヶ岳ロープウェイ

千畳敷カールから見上げる星空。10・11月には日帰りのナイトツアーを開催予定(写真/中央アルプス観光)

 

満天の星と千畳敷カールが待つ山上へ

今年開業55周年を迎えた中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイ。その名を聞くと、駒ヶ根観光協会のスタッフの言葉を思い出す。「ロープウェイで上がった千畳敷カールから見上げる星空は最高ですよ」。必ず行くと約束したのだが、コロナ禍で見送りが続き、ようやく念願がかなった。

千畳敷カールは中央アルプス・宝剣(ほうけん)岳の真下にある半円形のくぼ地で、氷河期の氷が岩肌を削って造られた。こうした地形をドイツ語ではカールといい、その広さから「千畳敷」が冠された。標高2612メートル。徒歩ならば登山となるが、ロープウェイを使えば約8分で昇れる。麓(ふもと)のしらび平駅へは飯田線駒ヶ根駅からバスで約40分。途中、中央道駒ヶ根IC(女体入口バス停)を経由するので、高速バスでもアクセスできる。

ロープウェイの前方に陣取り、いざ出発。第1支柱を過ぎると足元の視界が開け、左下に落差25メートルの日 暮の滝が見下ろせた。この先も大滝、中御所谷(なかごしょだに)三十八滝などが続くが、その水の青く透明なこと。手を浸せば、痺れるほど冷たいに違いない。後方を見ると南アルプスの山々が並び、富士山も顔を覗かせていた。

あっという間に千畳敷駅に到着。ここは日本最高所の駅であり、しらび平駅との高低差950メートルも日本一だ。それにしても、よくぞこの山岳地帯にロープウェイを通したものだ。歴史を紐解くと1967年開業の4年前から測量・地質調査を開始。とくに千畳敷駅の設置場所は慎重を期し、雪崩の有無や気温などを徹底的に調べるため真冬の山小屋に作業員が何日も寝泊まりしたという。

建設工事もヘリコプターや小型ケーブルクレーンで資材を上げたり、トラックでゴンドラを運ぶ際にトンネルを通過できず立ち往生したりと、苦労の連続だった。

「それでも心が折れなかったのは、『登山家だけが目にできた素晴らしい風景を多くの人に見てもらいたい』という思いでしょう」とは索道事業部の妹尾(せのお)貢作さん。その思いは継承され、安全運行のための努力を重ねている。

山並みと市街地を見下ろしながら進むロープウェイ(写真/中央アルプス観光)

眠るのが惜しい山の一夜

千畳敷駅に直結してホテル千畳敷がある。施設を一歩出れば西側に千畳敷カール、東側には南アルプスや駒ヶ根市街が望める。お目当ての星空について、スタッフの加藤平良 さんに訪ねると、「天気次第ですが、夏には『夏の大三角』(ベガ、アルタイル、デネブ)はもちろん、天の川も見えますよ。ただ星が見えすぎるので探すのが大変かもしれません」とニッコリ。さらに南アルプスから昇る感動的な日の出が望めるのも、宿泊者だけの特権と胸を張る。

ロケーションに加え、ホテルのもてなしも好評だ。男女別の風呂は大人10人が一度に浸かっても余裕のある広さ。夕食は信州サーモン、信州アルプス牛、そばなど、地元の食材を使った和食が中心で、ローストビーフなどの洋食も添えられる。食事会場のレストランは今年12月下旬(予定)まで改修中だが、完成すれば千畳敷カール側が全面ガラスになり、おいしい料理に絶景のスパイスが加わる。これらのもてなしを山の上で実践するのだから感服する。

広大な千畳敷の中にたつホテル(写真/中央アルプス観光)

山の一夜を楽しんだ翌日は、千畳敷カールを散策したい。例年7月下旬から8月上旬にはコバイケイソウ、シナノキンバイ、ミヤマキンポウゲなどの高山植物が短い夏を惜しむように、可憐な花を咲かせる。遊歩道は1周45分ほど。運動靴であれば心配ない。

登山靴や雨具が必需品となるが、木曽駒ヶ岳の日帰り登山に挑戦してみるのもいい。往復約4時間の初級コースで、山頂からは御嶽山、八ヶ岳、北アルプスなど360度の大パノラマが楽しめる。散策後は、ホテルのカフェでひと休み。雪解け水で淹れたコーヒーで渇いた喉を潤おそう。

文・写真/内田 晃

山を楽しむ関連ツアーはこちらから


中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイデータ

全長(傾斜長):2334㍍ 高低差:950㍍ 最大勾配:35度

最高運転速度:秒速7㍍ 運行開始:1967年(設立は1963年) 所要時間:7分30秒

交通:飯田線駒ヶ根駅からしらび平行きバス約40分、終点下車すぐ/中央道駒ヶ根ICから県道75号経由2㌔の菅の台バスセンターで路線バスに乗り換え30分、しらび平駅下車すぐ

料金:片道1370円、往復2540円

営業:8時~17時(時期により異なる)/無休(※料金と営業は掲載時のものです。最新のデータは公式ホームページなどをご確認ください)

TEL:0265-83-3107

 

ホテル千畳敷 1泊2食2万900円~(掲載時)/TEL:0265-83-3844(予約センター

2612Café 8時30分~16時30分(時期により異なる)/ロープウェイ運休時休/ TEL:0265-83-5201(ホテル千畳敷)

 

(出典:旅行読売2022年8月号掲載)

(WEB掲載:2022年8月3日)



Writer

内田晃 さん

東京都足立区出身。自転車での日本一周を機に旅行記者を志す。四国八十八ヵ所などの巡礼道、街道、路地など、歩き取材を得意とする。著書に『40代からの街道歩き《日光街道編》』『40代からの街道歩き《鎌倉街道編》』(ともに創英社/三省堂書店)がある。日本旅行記者クラブ会員

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