【旅する喫茶店】平岡珈琲店(大阪)
5組入れば満席のこぢんまりした店内
大正時代創業の老舗の味わいを
地下鉄本町駅から3分ほど。御堂筋の目と鼻の先のオフィス街の一角に〝珈琲(コーヒー)〞と書かれた暖簾(のれん)が見える。
平岡珈琲店の創業は1921年。何度か近所に移転はしたが、100年余りこの地に店を構える。
初代はハイカラなことが大好きで、当時流行の最先端といわれた東京・銀座の「カフェーパウリスタ」に通いつめたとのこと。そこで提供されるコーヒーとドーナツの味にひかれ、店主に頼み込んで作り方を教わってオープンしたのがこの店だ。
現在は3代目の小川流水(りゅうすい)さんが店を切り盛りする。自家焙煎(ばいせん)の豆を使い、コーヒーの粉を沸騰した湯に入れて煮出し、布でこして絞る〝ボイリング〞という抽出方法も、ドーナツのレシピも昔と変わらない。
一方で、自ら豆のブレンドを開発して「苦みブレンド」、「香りブレンド」などをメニューに加えたり、油で揚げない焼きドーナツを考案したりと、伝統を守りながらも常にリニューアルし続けている。
そんな小川さんのコーヒー目当てに、入れ代わり立ち代わり客が訪れ、大半の人がドーナツもいっしょに注文する。
「豆の種類や焙煎の度合いによって、コーヒーの色も異なります。味わい方、楽しみ方を伝えられたらと思います」と小川さん。100年の老舗で、次世代に向けてのコーヒー文化が脈々と育まれているようだ。
文/高崎真希子 写真/宮川 透
平岡珈琲店
住所:大阪府大阪市中央区瓦町3-6-11
交通:地下鉄御堂筋線・四つ橋線・中央線本町駅から徒歩3分
℡:090-6244-3708
※掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2023年2月号)
(Web掲載:2023年2月8日)