JR福井駅前

恐竜の街の恐竜風光る
　◉東京都新島村　曽根新五郎
＜評＞多くの恐竜化石が発掘された福井県勝山市。福井駅付近にも多くの恐竜のオブジェが立ち、その逞しさにあやかって、能登半島地震からの復興を強く望む作者の思いが「風光る」である。

レインボーブリッジ仰ぐ涼み舟
　◉世田谷区　倉持温子
＜評＞「涼み舟」とはいえ、じっさいはカッコイイ東京湾クルージング。レインボー（虹）という字を見ただけで涼しくなるから不思議。

担ぎ手の烏帽子（えぼし）傾（かし）ぐや帆手（ほて）祭
　◉仙台市　平山北舟
＜評＞帆手祭は毎年３月10日に宮城県鹽し お竈が ま神社で行われる神事。中でも荒神輿が有名。神聖なる烏帽子でさえ傾ぐという熱気が目に浮かぶ。

泥雪を付けて散らして路線バス
　◉埼玉県吉見町　青木雄二
＜評＞街に珍しく積もった雪。往来の激しさから、すぐに泥の雪と化す。付けて散らしてゆく路線バスに、この街に住む人の忙しさも重なる。

Ｔシャツはティラノサウルス蝶を追ふ
　◉杉並区　森 秀子
＜評＞小学生ぐらいの子どもか、大好きな恐竜がプリントしてあるＴシャツを着て小さな蝶を追う。その対比が面白く、巧である。

馬追の荒しき声や斑雪（まだらゆき）散る
　◉新宿区　居林まさを
貝合せも軸も源氏絵春日差（はるひざし）
　◉伊賀市　箱林允子
天女舞ふ敦煌（とんこう）空港空高し
　◉所沢市　木下富美子
断崖の夕日に染むる涅槃（ねはん）像
　◉ひたちなか市　川上修一
南風吹くや丸太造りの小学校
　◉神奈川県中井町　笹尾雅美
北窓を開けて旅行誌ひらきをり
　◉さいたま市　竹内白熊
あづまなる防人（さきもり）歌碑や梅真白
　◉横浜市　茅房克一
円窓の雪の景色や写経部屋
　◉佐倉市　廣康よしあき
雪柳なだれる飛鳥の宮の跡
　◉市川市　井田千明
天女かなバス待つ人の春ショール
　◉仙台市　星 良子

馬追の荒しき声や斑雪（まだらゆき）散る
　◉新宿区　居林まさを
貝合せも軸も源氏絵春日差（はるひざし）
　◉伊賀市　箱林允子
天女舞ふ敦煌（とんこう）空港空高し
　◉所沢市　木下富美子
断崖の夕日に染むる涅槃（ねはん）像
　◉ひたちなか市　川上修一
南風吹くや丸太造りの小学校
　◉神奈川県中井町　笹尾雅美
北窓を開けて旅行誌ひらきをり
　◉さいたま市　竹内白熊
あづまなる防人（さきもり）歌碑や梅真白
　◉横浜市　茅房克一
円窓の雪の景色や写経部屋
　◉佐倉市　廣康よしあき
雪柳なだれる飛鳥の宮の跡
　◉市川市　井田千明
天女かなバス待つ人の春ショール
　◉仙台市　星 良子

＜選者＞「墨BOKU」代表　津髙里永子
兵庫県出身。「小熊座」同人。よみうりカルチャー講師。句集に『地球の日』『寸法直し』著書に『俳句の気持』など。

津髙里永子先生の総評

いつか行ってみたいなと思わせる旅の句が多くて楽しいひとときを味わえました。どれも魅力的だったのですが、季語が入っていない句もありました。季節とその関わりとを感じながら詠むのが俳句なので、季語が入っていないと採り上げにくということをご理解くださいね。それから、今、旅に出られない人でも、以前に行かれたことを句にしてかまいません。過去形でなく、現在形でそのときの自分に戻って作ってみてください。

津髙里永子先生のワンポイント俳句講座

「俳句の魅力とは」
私は初心のときから今でも、こんな句を作ってわかってもらえるのだろうかと悩み、自分の思いが素直に伝わらなくて、いつも恥ずかしい思いをしてきました。ただ、俳句などよりずっと悔しく悲しいことが実生活であって打ちのめされていたとき、俳句の先輩が「俳句でカタキを打てばいいよ。」と助言してくれたことがあります。その夜、身のまわりのものから無理やり、俳句にしていきました。いつもは出来ない、出来ないと悩んでいた私ですが、集中しているうちに句も出来てきて心もすっきりしてきました。私の場合、悔しさや情けなさ等々、とにかく、心が動かなくては句にならないということがわかり、それ以来、俳句の魅力に取りつかれています。

【応募方法】
旅で詠んだ俳句、風景や名所を詠んだ俳句をお送りください。特選句には選者の直筆色紙と図書カード、入賞句には図書カードを進呈します。応募には旅行読売に添付の「投句券」が必要です。旅行読売は全国の書店またはこちらの当社直販サイトで送料無料でお求めいただけます。

（出典：旅行読売2024年7月号）
（Web掲載：2024年5月28日）