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【世界の絶景遺産】ジャングルに残されたマヤ文明の神殿群 ティカル(グアテマラ)

場所
【世界の絶景遺産】ジャングルに残されたマヤ文明の神殿群 ティカル(グアテマラ)

1号神殿は四面に急階段が付いているが、登頂禁止になっている

 

「マヤ文明消滅の謎」が残る遺跡

マヤ文明最大級の古代遺跡がティカルである。中米グアテマラの北部のジャングルに位置し、巨大な神殿ピラミッド群で知られている。

ティカルは、マヤ中部の有力な都市国家の一つで、4世紀から9世紀頃まで繁栄した。最盛期は、約120平方キロの広さに、約6万人が居住していたという。

9世紀末、ティカルは突然歴史の舞台から姿を消してしまう。その理由はわかっていないが、この頃、他のマヤ中部の都市も相次いで衰退したので、特別な事情がこの地域を覆ったようである。これが「マヤ文明消滅の謎」と言われるものだ。とにもかくにも、ティカルの王家は消え失せ、巨大都市はジャングルに覆われてしまった。

おかげで、ティカルはスペイン人らの侵略や略奪の被害に遭うことなく、往時の建造物がほぼそのままの姿で残った。ティカルが再発見されたのは、17世紀末、ひとりのスペイン人神父がジャングルで道を見失い、偶然たどり着いたときである。本格的な調査がおこなわれるようになったのは、19世紀になってからだ。

2号神殿(右)前の広場。奥は5号神殿

ピラミッド型の4号神殿の頂上から眺める緑の海

ティカルの現在の保護区域(国立公園)は約576平方キロに及び、淡路島の面積に匹敵する。中心エリアは約16平方キロで、3000にも及ぶ大小の建造物が発見されている。

その象徴が6基のピラミッド型の神殿である。なかでも有名なのは、「大ジャガーの神殿」と呼ばれる1号神殿だろう。高さ51メートル、9層からなり、外観はそそり立つような急斜面である。仰ぎ見ると、のけぞってしまうほどだ。

この神殿では、1958年の発掘で内部に墓が見つかり、ハサウ・チャン・カウィール王とみられる遺骸と、多くの副葬品が発見された。かつては神殿頂上に登ることができたが、転落事故が相次いだこともあり、現在は登頂禁止になっている。

大ジャガーの神殿の前には広場があり、向かい合うように別のピラミッドがある。これが2号神殿で、ハサウ・チャン・カウィール王の妻のために作られたとみられている。

最も巨大なピラミッドは4号神殿で、中心部からはやや離れたところにある。ここは現在も登ることができ、頂上からティカルを一望できる。グアテマラのジャングルに、ピラミッドの頂が点々と見える。緑の海に白い島が浮かんでいるようでもあり、これだけ美しい遺跡は、世界中探しても他にないのではないか、と思うほどだ。

宮殿などの建築物群も残されていて、アクロポリスと呼ばれている。市場跡や一般住居跡もあり、当時の市民生活に思いを馳せることもできる。

遺跡はいまもジャングルのまっただなかにある。住居跡に腰掛けて、周囲の木々を見上げてみると、たまにサルの群れが跳ねたりしている。吸い込まれそうなほど深い緑に恐怖すら覚えたのだった。

北のアクロポリス
4号神殿からの眺望。森の緑に浮かぶように奥に1号神殿、手前に2号神殿の上部が見える

【旅行データ】

ティカルの観光拠点は、グアテマラ北部の都市フローレス。日本からグアテマラへの直行便はなく、アメリカの諸都市での乗り換えになる。便にもよるが、首都グアテマラシティまで合計で20時間以上かかることが多い。グアテマラシティからフローレスへは、飛行機で約1時間。バスなら約10時間。フローレスからティカルへは約1時間。ホテルが仕立てる日帰りツアーバスなどを利用する。日帰りツアーの場合、遺跡の滞在時間が5~6時間と限られてしまうが、遺跡は広大なので、じっくり全部見るなら、2日に分けなければ回りきれない。

遺跡のゲート近くにもゲストハウスがあり、遺跡めぐりには便利。早朝から回れば、1日で全て見ることも可能。ただし、宿の数は限られているので事前に予約したい。


Writer

鎌倉淳 さん

1969年、東京都生まれ。旅行総合研究所タビリス代表。放送局記者を経て、世界の観光エリアや航空・鉄道に関する取材を続けている。著書に「死ぬまでに一度は行きたい世界の遺跡」(洋泉社)など

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