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【世界の絶景遺産】タイ文化の基盤を作った王朝の寺院群 スコータイ(タイ)

場所
【世界の絶景遺産】タイ文化の基盤を作った王朝の寺院群 スコータイ(タイ)

王室寺院ワット・マハタート

 

タイ初の独立王朝が興った歴史都市

バンコクから北へ約400キロ。タイ北部の都市スコータイは、タイ初の独立王朝が興った土地である。13世紀、アンコール朝から独立する形でスコータイ朝が成立した。3代目のラームカムヘーン大王の時代に黄金期を迎え、上座部仏教を受容し、タイ文字も考案されるなど、現代につながるタイ文化の基盤が創られた。

いわば、タイの原点ともいえる王朝なのだが、繁栄の期間は短く、14世紀後半には衰退に向かう。1438年までに、南のアユタヤ朝に吸収され姿を消した。

ただ、幸いなことに、スコータイの都は戦争で破壊されなかった。また、木材が主な建材だったアユタヤとは異なり、スコータイでは石材が主に用いられていため、多くの遺跡が残された。旧市街のスコータイ歴史公園には現在も、3重の城壁の内外に、寺院を中心とした200件もの遺跡が保存されている。公園の面積は約70平方キロメートルにも及ぶ。

最も有名なのが、城壁内の中心部にある王室寺院ワット・マハタートだ。約200メートル四方の境内に、185基の仏塔、10 基の礼拝堂、8基の仏堂が立ち並ぶ。王朝の繁栄と王室の権力がうかがえる、圧倒的な存在感の遺跡だ。

民衆向けの寺院はワット・シー・チュムで、スコータイ最大の仏坐像がある。高さ約15メートルで、下から仰ぎ見ると視線が合うようにつくられている。仏像の頭部の後ろには秘密の部屋が隠されていて、王がそこから人々に話しかけると、仏の声のように聞こえる仕掛けもあったという。

3基の塔堂が並ぶのが、ワット・シー・サワイ。トウモロコシのような形状はアンコール遺跡でも見られるが、じつはこの塔堂もアンコール朝時代のもの。建立当時はヒンドゥー教寺院だったが、スコータイ朝成立後に仏教寺院になったという。

トウモロコシのような形状のワット・シー・サワイ
ワット・シー・チュムのスコータイ最大の仏坐像

見応えのあるスコータイの遺跡

タイの遺跡といえばアユタヤが有名だが、筆者の個人的な感想を言えば、より見応えがあるのはスコータイだ。スコータイ歴史公園は広大なうえに、時期によっては暑いので、歩いて見て回るのは無理である。公園内を回るトラムを利用するほか、レンタサイクルを借りるのもいい。

スコータイからさらに北へ50キロほど行くと、シー・サッチャナーライ歴史公園という、スコータイ第2の都市の遺構もある。「ゾウが囲む寺」という意味のワット・チャーンロームで知られる。文字通り、仏塔の基壇の周りにゾウの立像が立ち並んでいる。

文・写真/鎌倉 淳

ゾウの立像が並ぶワット・チャーンローム
城壁北側にある重要寺院、ワット・プラ・パーイ・ルアン

【旅行データ】

日本からタイの首都・バンコクへは多数の航空便がある。バンコクからスコータイ空港へは国内線航空機で約1時間20分。バンコクからバスを利用すると、約7~8時間かかる。遺跡を全部見るなら丸1日かかるので、2泊した方がいい。

(掲載 2024年2月22日)


Writer

鎌倉淳 さん

1969年、東京都生まれ。旅行総合研究所タビリス代表。放送局記者を経て、世界の観光エリアや航空・鉄道に関する取材を続けている。著書に「死ぬまでに一度は行きたい世界の遺跡」(洋泉社)など

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