【世界の絶景遺産】海に浮かぶ要塞のような修道院 モン・サン・ミシェル(フランス)
砂州に立つモン・サン・ミシェル
「海上のピラミッド」とも呼ばれる壮麗な建築物
海に浮かぶ要塞のような修道院。それがモン・サン・ミシェルだ。「海上のピラミッド」の異名を持ち、フランス北東部の町、アヴランシュの海岸沖にそびえている。「モン」は山、「サン・ミシェル」は「聖ミカエル」を意味する。つまり、モン・サン・ミシェルとは「聖ミカエルの山」である。
708年、大天使ミカエルがアヴランシュの司教の夢に現れ、聖堂を建てるよう命じた。司教が小さな聖堂を建てると、陸続きだった岩山が一夜にして海に囲まれ島になったと伝えられている。そのため、「聖ミカエルの山」なのである。
小さな聖堂は、増築を繰り返し、巨大な修道院となった。14~15世紀の英仏百年戦争時には城塞となり、堅固な城壁も作られた。18世紀末のフランス革命時には修道院が廃止され、監獄に転用されたという。
修道士が戻ったのは第二次世界大戦後のことで、現在はフランスきっての観光名所でもある。海に浮かぶ円錐形の姿は美しく、旅行者の心を奪う。
聖堂前のテラスから海を眺める
島へは、アヴランシュの岸から木道橋で渡れるようになっている。侵入者を防ぐはね橋のある王の門をくぐると、一気に中世の雰囲気だ。曲がりくねった細い坂道の両側には、土産物店やホテル、レストランが並ぶが、そうした店舗すら歴史を感じる。
勾配がきつくなると、いよいよ修道院の入り口である。落とし格子(ごうし)のあるアーチの門をくぐると、急な勾配の階段がつづく。登り終えると、聖堂前の西のテラスである。すでに海抜80メートルで、眼下に広がる海が美しい。
上からみると、陸地と島を隔てているのは砂州であることがわかる。潮の干満が激しい場所で、聖堂は干潮時には陸続き、満潮時には島になるのだ。
10世紀から16世紀にかけて建設された修道院は3層構造になっている。崩壊と再建を繰り返したため、ロマネスク様式とゴシック様式が混在している。聖堂の奥にある内陣はゴシック様式で、高い天井から光線がふりそそぐ。
モン・サン・ミシェルには、いまも十数人の修道士が住んでいるそうで、厳かな雰囲気が漂う。修道士の居住空間はラ・メルヴェイユと呼ばれる。ここも3層構造で、最上階に食堂と回廊がある。中庭の庭園は美しく整えられ、緑がまぶしい。
【旅行データ】
モン・サン・ミシェルは、パリ市内から約280キロ離れているが、TGVを使えば日帰り旅行が可能だ。パリ~レンヌ間がTGVで片道約2時間。レンヌからモン・サン・ミシェルまでは連絡バスで約1時間。往復6時間かかるが、早朝に出発すれば、現地に4時間程度は滞在できる。パリから日帰りのバスツアーも出ている。
(Web掲載:2023年11月1日)