フランスと広島の師弟シェフの「絶景」料理。日本三景・宮島で味わう
広島県が主催したイベントの会場は、同県廿日市市の宮島中央部弥山(みせん)の大聖院(だいしょういん)客殿。メイン料理の鶏胸肉のベルベーヌ風味を盛り付けた皿には宮島のシンボル、モミジの葉が配されている。後方には宮島の風景が広がる。
主役はどれだろう?
立体アート作品のような盛り付け。フランス人シェフのアレクサンドル・ゴチエさんと広島県在住の弟子・小竹隼也(じゅんや)さんらが、日本三景・宮島で創造した料理が問いかけてくる。
例えば、魚料理の「ホタテ貝ブリュレ、カリフラワーサラダ添え」の主役は、普通ならば当然ホタテ貝だ。 けれど、食べているうちに、生に近いシャキシャキとした触感と、ミルキーな風味をたたえて鼻腔に立ち上ってくるカリフラワーの滋味深い味わいが、いつのまにか主役になっている。なんだ、あなたが主役だったのね、と思ってカリフラワーを堪能していると、今度は、ホタテのジューシーな旨味によって、カリフラワーのことなど完全に忘れさせられてしまう、といった具合だ。
「私の料理では、食材が生まれたテロワール(土壌・風土)とその背景の歴史が主役」と語るゴチエさん。広島から「平和」を想起し、それを象徴する白い鳩から、テーマを「白」に決めた。
そして、ゴチエさんと力を合わせた広島の若き料理人たち。彼らのこれからが、とても楽しみだ。
若手料理人の発掘・育成に取り組んでいる広島県では、毎年「ひろしまシェフ・コンクール」を実施、成績優秀者の海外での修行をバックアップしている。
今回、コンクール第1回成績優秀者である小竹さんの修行先である、フランスのミシュラン二つ星レストラン「ラ・グルヌイエール」のオーナーシェフ、アレクサンドル・ゴチエさんや歴代のコンクール成績優秀者によって、芸術的な料理が披露された。器も県内で活躍する作家が手がけたものを使った。広島とフランスの食文化が、皿の上で、見事に溶け合った。
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「旅行読売」2020年1月号が19年11月28日に発売された。第1特集「あの味、思い出 駅弁物語」の中で、駅弁総選挙の結果を発表。2位に広島県の宮島口駅などで販売されている「あなごめし弁当」が入っている。