フランス東部ロンシャンの礼拝堂、大胆なデザインの中の静けさ。ル・コルビュジェ後期の傑作
「ロンシャンの礼拝堂」(ノートルダム・デュ・オー礼拝堂)©laporterie/AONDH
フランス東部ロンシャンにある「ロンシャンの礼拝堂」(ノートルダム・デュ・オー礼拝堂)は、教会建築としては大胆なデザインだ。正面から見ると、厚みのある屋根が印象的だ。この屋根のデザインは「蟹の甲羅」がヒントになっているという。
確かに「甲羅」のように見える屋根は、「甲羅」が蟹の体を守るように、礼拝堂を手厚く守っている。
礼拝堂を設計したのはスイス出身の建築家ル・コルビュジェ(1887年~1965年)。20世紀で最も偉大な建築家とも評され、フランス、スイスなど欧州諸国や南米アルゼンチンやアジアの日本、インドなど7か国にある17件の建築物を構成遺産として、2016年、「ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献―」が世界遺産に登録された。-
日本での構成遺産は東京・上野の「国立西洋美術館」。「国立西洋美術館」など、ル・コルビジェ建築は「直線」、機能性・合理性が印象的なものが多い。
そんな中で「ロンシャンの礼拝堂」のデザインは異色で大胆だ。1950年に設計を開始、55年に竣工した。ル・コルビュジェ後期の傑作として名高い。
ロンシャンが属する「ブルゴーニュ・フランシュ・コンテ」地域圏の観光説明会が2019年12月5日に東京で開催された際、「ロンシャンの礼拝堂」のセールスマネジャーのセシル・コルドバールさんは、「ほかのル・コルビュジェ建築が直線的なのに対し、『ロンシャンの礼拝堂』のデザインは曲線が特徴的です」と説明してくれた。
「このところ日本からの観光客の来訪が増えていますが、日本の国立西洋美術館との比較も出来ますし、『ロンシャンの礼拝堂』をもっと多くの日本人の方に、直接見ていただきたい」と呼びかける。
外から差す光が拡散し、静けさの中の祈りの空間を演出
礼拝堂を外から見ると、分厚い屋根、厚い壁に囲まれて、外部と隔絶されているような印象がある。ところが、内側では、壁の小さな開口部にはめ込まれた、モダンなデザインのステンドグラスを通じて、様々な色合いの光が差し込んでいる。
開口部のそれぞれは小さいが、内部では光が拡散しており、外界とのつながりを感じさせてくれる。暗がりの中に差し込む光は、静けさの中の祈りの空間を絶妙に演出している。
この礼拝堂は光の効果を最大限にいかした建築物という面も持つ。
建物の外側には、ル・コルビュジェの他の建築物と共通する直線的な構造もある。
カトリック信者だったル・コルビュジェがどのような思いや意図でこの礼拝堂を設計したのか、内部で、色とりどりの光に照らされながら、想像を巡らしてみたい。
ノートルダム・デュ・オー礼拝堂公式ウェブサイト(英語、フランス語、ドイツ語)
http://www.collinenotredameduhaut.com
観光情報はフランス観光開発機構ウェブサイトで。
https://jp.france.fr/ja