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【お得きっぷで鉄旅へ】どうなる?お得きっぷ&フリーきっぷ

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【お得きっぷで鉄旅へ】どうなる?お得きっぷ&フリーきっぷ

青春18きっぷで楽しむ普通列車の旅。奥羽線大鰐温泉駅で

お得きっぷやフリーきっぷの廃止や縮小が、JR各社で相次いでいる。その背景には何があるのかを考察し、鉄道ファンに愛用されてきたお得きっぷやフリーきっぷが今後、どうなっていくのかを予測してみた。

鉄道ファンに愛用されてきたお得きっぷやフリーきっぷは?

2024年冬に青春18きっぷのルールが変更されたのに続き、25年6月には、週末パス、首都圏週末フリー乗車券、東京フリー乗車券が姿を消す。往復割引も26年3月での廃止が決まっている。少し前の話だが、フルムーンパスも22年に販売を終了した。

こうした流れの理由はさまざまだが、青春18きっぷの場合は、自動改札機対応が大きなポイントと言える。ルール変更前の青春18きっぷは有人改札使用を前提にした仕組みだったが、人手不足により、とくに大都市部で有人対応が難しくなってきたのだ。自動改札機に対応させるためには、仕組みが複雑になる分割利用や複数人利用を取りやめ、連続使用のルールに変更せざるを得なかったようだ。

週末パスなどは、きっぷのデジタル化の影響を受けた。JR東日本では、新幹線のチケットレス利用率を75%に、えきねっと取扱率を65%にする目標を掲げている。そのため、特に新幹線が利用できる割引きっぷは、チケットレスにしやすい、乗車券と特急券がセットになった片道タイプを充実させる方向にある。その反面、仕組みがやや複雑な、乗車券と特急券が別々の、周遊タイプや往復タイプの割引きっぷを縮小しているのである。

2.東北新幹線.jpg
JR各社は新幹線の割引きっぷをチケットレス対応のものに絞り始めている。東北新幹線新白河駅で

デジタル化の進展がポイントに

ただし、周遊タイプの割引きっぷが減る一方かというと、そうでもない。地方の在来線では、デジタル化されたフリーきっぷが増えている。例えばJR西日本では、「tabiwa(タビワ)」というアプリで購入できるデジタル周遊パスを多数販売している。一例を挙げると、「山陰のんびりパス」は、鳥取・島根のほぼ全域が普通列車で乗り放題。昔の山陰ワイド周遊券を思い出させる広いフリーエリアだが、3日間4500円と値頃感がある。

タビワの周遊パスは、スマホに表示した画面を有人改札で提示して利用するという「アナログ」な側面を残している。つまり、自動改札機に対応していないので、大都市圏や新幹線での展開が難しい。

そのため、最近は2次元コードを活用した割引きっぷも登場してきた。先行しているのは関西地方である。JR西日本を含む関西鉄道会社7社は、「KANSAI MaaS(カンサイマース」というスマホアプリを共同で導入し、大阪・関西万博に合わせて多くのフリーきっぷの販売を開始した。例えば「大阪スマートアクセスパス」は、大阪市周辺のJRと大阪メトロが1日乗り放題で、価格は1200円。利用時はスマホに2次元コードを表示させ、対応する改札機にかざして乗車する。

こうしたデジタルチケットは、2次元コードをスマホ画面に表示させるか、紙やきっぷ券面に印刷するなどして、対応改札機を通過できるようにしたものだ。鉄道各社は、近い将来、磁気券によるきっぷを廃止し、デジタルチケットに置き換える目標を掲げ始めており、対応改札機が全国に急速に広まっている。さらに普及が進めば、割引きっぷの多くがデジタルチケットで販売されるようになるだろう。

5.東急の二次元コード対応改札機.jpg
東急電鉄の2次元コード対応改札機。交通系ICカードに加え、クレジットカードのタッチ決済もできる

青春18きっぷが将来的に存続する場合は、デジタルチケット化される可能性もある。面倒に思う方もいるかもしれないが、デジタル化にはメリットも多い。磁気券よりも柔軟なルール設定ができるからだ。例えば、青春18きっぷを「1日券5枚セット」「分割、非連続利用可」というルールに戻すことも可能になるだろう。2次元コードを1日分ごとに発行する仕様にすれば実現できるからだ。

もちろん、懸念もある。割引きっぷは売れなければ販売が終了してしまう。デジタル化する前に、青春18きっぷが販売不振で廃止されないように願いたい。

文・写真/鎌倉 淳 (旅行ブロガー)


※記載内容は掲載時のデータです。

(出典:旅行読売2025年7月号)
(Web掲載:2025年8月20日)


Writer

鎌倉淳 さん

1969年、東京都生まれ。旅行総合研究所タビリス代表。放送局記者を経て、世界の観光エリアや航空・鉄道に関する取材を続けている。著書に「死ぬまでに一度は行きたい世界の遺跡」(洋泉社)など

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