【お得きっぷで鉄旅へ】青春18きっぷを使いこなそう<鉄道ライター誌上座談会>

オホーツク海に沿って走る釧網線の車両(写真/ピクスタ)
新たな青春18きっぷを有意義に使うにはどうしたらよいか? 本誌でもおなじみの6人の鉄道ライターに存分にアイデアを出し合ってもらった。今後の18きっぷ旅の参考にもなりそうだ。
今回の18きっぷのリニューアルをどう感じている?
A 3日間用の登場はありがたいが、18きっぷの大きな魅力は「普通列車JR全社乗り放題」と「利用期間内に使いきればよい」の2点だと思っていた。連続使用に限定されたことは魅力半減に感じてしまう。
N 連続で1人での使用が前提になったので、使い道が少なくなるだろうなと思う。
S 値段も5日間用(1万2050円)は1日当たり2410円と据え置かれたが、3日間用(1万円)は1日当たり約3333円とやはり割高に感じられる。
R 「普通・快速列車が乗り放題」という18きっぷの魅力の根幹は変わらないが、自由度は大きく低下した。相模湾の絶景を車窓に見ながら旅する
東海道線根府川駅付近
(写真/ピクスタ)
J 紙のきっぷで自動改札対応にしようとすれば、連続化と複数利用不可は避けられないので、結局は仕方ないということになる。
以前の18きっぷを主にどのように使っていた?
T 期間中に分けて使うことが多かった。2回分で関東から関西を往復し、次の2回分で東北に往復。残った1回分で関東近郊の日帰り旅といった感じ。
R 国鉄完乗を目指していた学生時代はよく18きっぷで九州や北海道に行った。完乗のためにはローカル線に乗ることが多く、18きっぷとの相性はよかった。
A 私も学生時代はとりあえずシーズン初めに18きっぷを買い、使い道は後から考えていた。
J ここ10年ほどは5日間連続で使ったことはなく、だいたいバラバラに使っていた。あまり計画を立てず、地方のローカル線に自由気ままに乗っていた。
3日間用はやはり割高感が……
今回の変更による利用者のメリットはどんな点か?
N 自動改札機が使えるようになり、改札を通る時間がかからなくなったのは大きなメリットだ。
T 自動改札は便利かもしれないが、個人的には改札が混み合うことがない郊外駅を利用するのであまりメリットは感じない。
A 3日間用は、大人になってから「普通列車の旅に出てみようかな」という場合の入門用にはちょうどよいかも。とりあえずこれを買っておけば何とかなるというのは、強い味方に感じられ、お手軽感がある。
R 北海道新幹線オプション券で乗れる区間が奥津軽いまべつ― 木古内(きこない)駅間から新青森―木古内駅間に変更されたことで、本州―北海道間の移動がスムーズになった。値段は4650円に上がったが、津軽海峡を渡る時間が大幅に短縮された。
北海道新幹線オプション券の変更で本州から北海道への移動がスムーズに(写真/谷崎 竜)
変更によるデメリットは?
A 連続使用のハードルの高さ。5日連続の旅となると、社会人の場合は日程確保が厳しい。3日間用は5日間用に比べると割高なので、「元が取れる」旅程を事前に組む必要がある。
T ひたすら5日間乗れる人がどれくらいいるのか。社会人の利用はまず見込めないのでは。
J 複数人利用不可で、シニアの夫婦旅行やグループ旅行で使いにくくなったという声も聞く。
S せめて有効期間内の任意の3日や5日にしてほしかった。自由気ままな思いつきの日帰りひとり旅やグループ利用ができなくなったのは残念でならない。
こんなコースで使ってみたいというプランは?
N 5日間用なら大阪方面への各駅停車の旅。1日目は東京から姫路までひたすら移動し、2~4日目は関西方面の各駅停車の旅。5日目に反対ルートで帰京する。
A 往復は飛行機で新千歳空港へ移動し、5日間で気の向くまま北海道乗り潰しの旅をしてみたい。ルート重複もお構いなしに乗りたい所を乗れるのが18きっぷなどフリータイプのきっぷのメリットだと思う。
J 3日間用なら首都圏から300キロ圏内の周遊旅行。東京から名古屋、仙台などに旅行するなら片道6〜7時間程度で鉄道旅を楽しみながら現地滞在もできる。新幹線でワープして中国や東北地方のローカル線を乗り潰すのもいい。
S 遠くまで行くことを前提とするなら挑戦的なコースを組んでみたい。3日間用で稚内から東京へとか、東京からJR最南端の西大山へとか。達成感を味わいたい。
5日間用で日本縦断の旅も可能に
こんな使い方もできるのでは、というアイデアは?
R 有効日を全部使う必要はない。3日間用なら片道281キロ以上を往復、5日間用なら片道341キロ以上を往復すればきっぷの元が取れる。5日間用で1日目に東京から大阪へ移動し、大阪で観光して4日目に東京へ戻る行程でも十分に元が取れる。
S 3日間に縛られることはなく、1日や2日で元を取る行程を考えるのも青春18きっぷの楽しみ方の一つではないか。
J 北海道新幹線オプション券の区間拡大で、稚内から枕崎への日本縦断ができるようになった。5日間用の使い方としては楽しいと思う。
A 逆に、基本に立ち返るとするなら、東京から東海道線、山陽線をひたすら乗り潰して西に向かう使い方はどうかなあと。鉄道旅初心者の頃にやっていたプランではあるが。
JR最南端の指宿枕崎線西大山駅。5日間用を使えばダイナミックな鉄道旅も可能になる(写真/谷崎 竜)
今後の18きっぷはどうなっていくと考えるか?
J 新ルールだと鉄道乗り潰し以外に用途が少ないので、鉄道ファン向けのきっぷになっていくのでは。一般利用者が減って、認知度が下がっていきそう。
T 今の仕組みのままでは、利用者低迷→廃止の流れしか見えてこない。
R 近年は新幹線の開業で第3セクターに移管された路線も多く、年々使いづらくなっている印象も否めない。ただ、18きっぷは国鉄時代から続くロングセラー商品で幅広い世代から根強い人気がある。変更されたばかりで予想は難しいが、当面は現状のまま販売が継続されるのではないか。
S 一度定めたルールが利用者の声を受けて改善されることは残念ながら期待できない。現行ルール内で可能な限りのコース案を練って18きっぷ旅を楽しみたい。
相模湾の絶景を車窓に見ながら旅する東海道線根府川駅付近(写真/ピクスタ)
個人的には今後の18きっぷはどんなものになってほしいか?
A JR全線乗れるという魅力は他にはないので、そのまま残してもらいたい。できれば、値段が上がってもよいので、「連続」のルールを元の形に戻してもらえたらとてもありがたい。
A 3日や5日の連続使用をやめて元の回数制に戻してほしい。
R 18きっぷによる「鈍行列車の旅」は、特急の車窓からは見落とされがちな風景も魅力で、文化風土の移り変わりが実感できる。鉄道高速化の時代だからこそ、「スローな旅」が見直されているのかもしれない。そんな旅にぴったりな18きっぷの継続を願い、今後も利用していきたい。
構成/山脇幸二
※参加者は、A=蜂谷あす美(旅の文筆家)、N=越 信行(駅旅写真家)、S=松尾 諭(鉄道カメラマン&ライター)、R=谷崎 竜(旅行ライター)、J=鎌倉 淳(旅行ブロガー)、T=伊藤岳志(鉄道カメラマン)
※記載内容は掲載時のデータです。
(出典:旅行読売2025年7月号)
(Web掲載:2025年8月16日)