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【旅と駅弁・駅麺】小海線の駅弁🍱&駅麺旅

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【旅と駅弁・駅麺】小海線の駅弁🍱&駅麺旅

八ヶ岳(標高2889メートル)を仰ぎつつ高原野菜畑を縫って走る世界初のハイブリッドトレイン、キハE200形。清里―野辺山駅間

八ヶ岳高原線の愛称で親しまれている小海線で楽しむ絶景と駅弁

八ヶ岳高原線の愛称で親しまれている小海線は我が故郷の鉄道である。私事で恐縮ながら、私は小諸に生まれ、中込(なかごみ<佐久市>)で育った。父は中込駅、母は小諸駅の駅員だった。それだけに小海線は思い出多き両親のような鉄道だ。

久しぶりに小海線に乗りたくなり、新宿駅を8時ちょうどに発車する特急「あずさ5号」に乗る。8時ちょうどといえば、昭和52年に「狩人」が歌って大ヒットした「あずさ2号」が思い浮かぶ。9時53分に小淵沢駅に着いて列車を降り、一目散に改札横の「丸政(まるまさ)そば」へ。名物の「山賊(さんぞく)そば」をかき込む。

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【山賊そば/700円】丸政そばで一番人気の山賊そば。長野県の郷土料理、ニンニク醤油ダレに漬け込んだ鶏もも肉に片栗粉をまぶして揚げた「山賊焼き」に由来。そば殻も一緒に挽き込んだそばは風味豊か

食後は駅1階の売店「MASAICHI(マサイチ)本店」へ。昼食用に駅弁「高原野菜とカツの弁当」を購入し、10時39分に発車する小海線の観光列車 快速「HIGH RAIL(ハイ レール)1375」小諸行きに乗車した。

発車と同時に車窓には甲斐駒ヶ岳や八ヶ岳が雄姿を見せる。やがて清里駅を過ぎて山梨と長野の県境を流れる境川を渡る。その数秒後に通過する踏切が「JR鉄道最高地点」の標高1375メートル。列車名の由来の地というわけだ。車窓には八ヶ岳の裾野に高原野菜の畑が広がった。では、そろそろ「高原野菜とカツの弁当」をいただこう。

感動的なのは生野菜の量。レタス、セロリ、キュウリ、カリフラワーなどみずみずしさとシャキシャキ感がたまらない。その上、チキンカツのおいしいこと。低温でじっくり揚げるのでサクサクの食感だ。

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【高原野菜とカツの弁当/1400円】小淵沢の老舗駅弁店「丸政」が試行錯誤の末、商品化に成功した日本初の生野菜が入った駅弁。1970年の発売から55周年というロングセラー駅弁で、購入できるのは小淵沢駅、甲府駅(土・日曜)。問い合わせ:小淵沢駅(中央線)丸政/TEL:0551-36-2521

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最高地点を示す木製の標柱

快速「HIGH RAIL 1375」は週末を中心に、昼間の1・2号、そして夜間の「星空」の1日3便が運行する。ユニークなのが星空号。暮れなずむ頃、小淵沢駅を出発し、野辺山(のべやま)駅にて約40分間、星空観賞が楽しめるのだ。今宵(こよい)はどんな星たちが姿を見せてくれるのだろう。期待をのせた列車は19時22分、小淵沢駅を発車した。

発車と同時にアナウンスがあり、予約しておいた駅弁「HIGH RAIL星空 特製弁当」を受け取る。さっそく弁当を開くと、八ヶ岳をバックに走る「HIGH RAIL 1375」の立体ペーパークラフトが現れた。夏休みの工作で、ボール紙を切ったり貼ったりして作ったことを懐かしく思い出しながら特製弁当をいただく。

内容は、信州サーモンむすび、野沢菜むすび、まつたけむすび、巨峰かんてん餅など。長野と山梨の美味満載のおむすび弁当だ。車内で購入したクラフトビール「星のふる夜に」がよく合う。

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【「HIGH RAIL 星空 特製弁当」/1300円】左上から時計回りに、信州サーモンむすび、ポテトサラダとミニトマト、まつたけむすび、巨峰かんてん餅、牛むすび、しゅうまい、野沢菜むすび、玉子焼きとリンゴ、肉団子。HIGH RAIL 星空(小海線)専用サイト「JRE MALL オーダー」で事前予約👉こちら

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「HIGH RAIL1375」のエンブレム

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景色が見やすいようにレイアウトされた「HIGH RAIL1375」車内

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野辺山駅に停車する「HIGH RAIL1375」。野辺山駅の標高は1345.67メートル。日本一標高の高い駅だが、線路の最高地点は野辺山―清里駅間1375メートル

ほどなく列車は野辺山駅に停車。はやる気持ちを抑えつつ星空観賞会場の銀河公園へ。すると、オリオン、シリウス、カシオペアなど冬の星座が浮かび上がった。

文・写真/櫻井 寛


※記載内容は掲載時のデータです。

(出典:旅行読売2025年12月号)
(Web掲載:2025年11月17日)


Writer

櫻井寛 さん

1954年、長野県生まれ。フォトジャーナリスト。東京交通短期大学客員教授。著書に「世界鉄道切手夢紀行」(日本郵趣出版)、「列車で行こう! JR全路線図鑑」(世界文化社)など

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