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加賀百万石の街・金沢で武家や町人の伝統文化に出会う

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加賀百万石の街・金沢で武家や町人の伝統文化に出会う

通りの両側に出格子の茶屋や町家が立ち並ぶひがし茶屋街

フリー乗車券で城下町巡り

秋の一日、しっとり情緒ある街を歩きたくなった。頭に浮かんだのは金沢。北陸新幹線に乗れば都内から2時間30分。次の休みには金沢駅に降り立っていた。

北鉄バス1日フリー乗車券なら市内中心部の指定エリアのバスは乗り降り自由。まずは金沢21世紀美術館で途中下車する。現代的な建物が隣の金沢城と見事に調和している。庭園や現代を代表する作家の作品を展示する交流ゾーンは入場無料で、ここだけでも見応え十分だ。

金沢城は加賀藩主だった前田氏の居城だ。向かい側には廻遊式庭園の兼六園がある。厳めしい城門や豪華な大名庭園は、金沢が京都などと違い、武家の街として発展したことを実感させる。

金沢城公園のシンボル、橋爪門続櫓と五十間長屋
金沢城公園のシンボル、橋爪門続櫓と五十間長屋
加賀藩歴代藩主によって形作られてきた兼六園
加賀藩歴代藩主によって形作られてきた兼六園

格子戸の町家が連なる小路を歩いて

次は町人文化が花開いた街へ。兼六園下から橋場町までバスで5分ほど。主計町茶屋街をぶらぶら歩く。浅野川沿いに格子戸の町家が連なり、川風に揺れる柳が風情を添えている。

浅野川を渡ると、ひがし茶屋街だ。観光案内所と休憩処を兼ねたひがし茶屋休憩館には観光ボランティアガイドの「まいどさん」が常駐しており、30分ほど無料でガイドを頼める。現在も営業を続ける茶屋はあるが、多くの茶屋の建物は飲食店や土産物店になり、昼間は気軽に歩ける街に変わったそうだ。

店の表に掲げられたメニューに惹かれ、小路にたたずむ小料理店ののれんをくぐった。「東山 みずほ」のランチは土鍋で炊いたご飯に、家庭料理が並ぶ。加賀野菜を使ったおばんざいや郷土料理が少しずつ味わえ、デザートも付いているのがうれしい。

東山 みずほの一汁六菜ランチ
東山 みずほの一汁六菜ランチ

箸の金箔貼り体験に挑戦

ひがし茶屋街には金箔工芸の店も多い。金沢の金箔製造は約400年続く伝統工芸で、金沢箔は国内99%のシェアを占めるそうだ。金箔貼り体験は金沢ならではと知り、「金銀箔工芸さくだ」で箸の金箔貼りに挑戦。1万分の1mmの薄さの金箔は、吐息で飛びそうになり、わずかな力で破れる。金箔を扱う職人仕事は、さぞ根気と緻密さが要求されることだろう。

茶屋を改装した久連波は、喫茶と加賀友禅などの和小物の店。茶の湯が盛んな金沢では、和菓子も発展した。中でもここの上生菓子は、高級料亭や茶屋だけに卸している和菓子屋のもの。上品な甘さを抹茶とともにゆっくり味わう。2階の座敷からはひがし茶屋街を見下ろせる。

金銀箔工芸さくだで箸の金箔貼り体験
金銀箔工芸さくだで箸の金箔貼り体験

ライトアップされた城下町

日が暮れると観光客の波は退き、ひっそりしていた茶屋に明かりが灯った。なじみらしい客がくぐった木戸の奥は、「一見さんお断り」の世界。華やかなお座敷を想像して、胸がときめく。この街本来の顔を垣間見たような気がした。

夜の金沢はライトアップでも有名だ。毎週土曜の夜は、金沢城公園石川門など20近いライトアップスポットを周遊する金沢ライトアップバスが運行している。夕食を兼ねて夜の城下町を巡るのも素敵なひと時であろう。

夕暮れのひがし茶屋街は、艶っぽい雰囲気に包まれる
夕暮れのひがし茶屋街は、艶っぽい雰囲気に包まれる

新鮮な地魚を求め港町へ

翌日はひと味違う金沢も見たくなり、北前船の寄港地として栄えた港町、大野へ行くことにした。武蔵ヶ辻・近江町市場バス停から大野行きバスで約40分。この町はしょうゆ醸造が盛んだそうで、古びた板壁がノスタルジーを感じさせる。

港近くの金沢港いきいき魚市には、ガンドやカマスなど地の魚が並ぶ。見るからに新鮮で生きがいい上、仲買人などの直売店のため、割安。その場でさばいてもらったり、宅配便で送ることもできる。

たった1泊で金沢のいろいろな顔を堪能でき、大満足で帰路についた。

文/出口由紀 写真/谷口哲

施設データ

問い合わせ

金沢市観光協会 TEL 76-232-5555
https://www.kanazawa-kankoukyoukai.or.jp/

(出典 「旅行読売」2016年11月号)
(ウェブ掲載 2019年10月1日)

Writer

出口由紀 さん

美味しいものには目がないライター。その土地の空気の中で味わう新鮮な特産品や郷土料理は、旅ならではの醍醐味だと思っている。最近感動したのは、生でかじった北海道の白いトウモロコシと夏の日本海の岩ガキ。土地それぞれの言葉を聞くのも好きで、一期一会の出会いと会話を楽しみながら旅をする。