女性客が8割の東伊豆の湯宿。女ひとりの気ままな贅沢旅へ
露天風呂「碧海」。月夜は海面に月光が反射するムーンロードが美しい(写真/吉祥CAREN)
なんと宿泊客の8割が女性
秋が来たのに夏の疲れが抜けない。この辺でひと息つきたいと思い出したのが、北川(ほっかわ)温泉にある吉祥CAREN(カレン)だ。何でも「女性なら絶対ときめくサービスがてんこ盛り!」らしく、宿泊客の8割が女性で、ひとり旅も多いという。少し値は張るが、自分へのご褒美として訪れてみることにした。
往復には東日本のリゾート列車「伊豆クレイル」を選んだ。白地にピンク色の車両も、小田原駅発11時40分という早起き不要の運行ダイヤも今回の旅にはぴったりだ。
ウエルカムサービスに大感激
小田原駅構内にある「伊豆クレイル」専用のラウンジから旅はスタート。2号車にあるバーカウンターで昼から酒を飲んだり、広々した座席で大きな窓から遠く近く相模湾を眺めたりしているうちに伊豆熱川駅に着いた。ここからレトロでかわいい送迎バスに乗り、約10分で「吉祥CAREN」に到着。笑顔の女性スタッフにモダンな吹き抜けのあるロビーへと招き入れられた。
部屋でひと息ついた後、最初の楽しみはウエルカムパンケーキ&ドリンクだ。シェフがその場で焼いてくれる生地はフワフワの食感。パンケーキも、伊豆ぐり茶やアロエ入り焙じ茶などの飲み物もおかわり自由でうれしい。窓の外には青くきらめく相模湾。すでに「来てよかった~」と思っている自分がいた。
水平線を眺めるパノラマ露天風呂
「お客様のお好みのスタイルで、ゆっくりと非日常の時間を過ごしていただくことがモットーです」
スタッフがそう語る吉祥CARENの最も「非日常」な場所といえば、温泉大浴場に併設の露天風呂「碧海(へきかい)」。色浴衣に着替えて、さっそく向かう。
その風呂は、海に面した崖の上に立つ宿の中でも、ひときわ海にせり出した部分にある。小屋掛けも目隠しの壁もなく、ただ二つの湯船が青空の下に並んでいる。身をひたせば、水平線が目の高さ。まるで海外のビーチリゾートのようと言ったら大げさだが、それくらいの開放感がある。2019年7月には海と空のパノラマの景色が広がる新露天風呂を増設した。
自家源泉で、泉質は弱アルカリ性のナトリウム―カルシウム・塩化物泉だ。皮膚の老廃物が優しくオフされていくのが実感できるうえ、湯上がり後もしばらくは汗が噴き出すほど温まる。客室の洗面所まで「館内のお湯は全て温泉」というのも豪快だ。
湯巡りとエステでデトックス
宿にいながらの湯巡りも楽しい。海沿いにある姉妹館の貸切風呂や大浴場など全部で18の湯船が無料で入れる。わずかな距離でも送迎があったり、籠バッグを貸してくれたりと至れり尽くせり。また、館内には一フロアを丸ごと使う「吉祥スパ」もあり、海を眺めながらエステ(有料)で疲れた肌や体をリセットしてもらえるという至福の体験も。
夕食はフレンチ懐石か鉄板焼きコースが選べるが、シェフが客の前で焼いてくれる後者を選んだ。和牛ステーキをメインに、キンメダイや旬の野菜などの伊豆の山海の幸を堪能し、伊東市出身のシェフとの会話で旅の夜が和やかに過ぎていく。
焼きたてフレンチトーストで優雅な朝を
翌朝は、夜明け前に早起きして再び大浴場に行ってみた。露天風呂の真正面の水平線に筋状の光が差したと思った瞬間、青く霞んだ世界が一変した。大海原も、木組みの湯船も、そして北側の海岸線に切り立つ城ヶ崎海岸の見事な柱状節理の岸壁まで、すべてが柔らかなオレンジ色の光に包まれていく。伊豆大島や利島の島影も美しい。言葉を忘れる絶景だ。
焼き立てのフレンチトーストや、手際よく焼かれるふわとろオムレツの朝食、チェックアウト後の楽しみにとすすめられたフレンチシェフによる料理教室(有料)も確かに「女性ならときめく」体験だった。日本の温泉旅館にいながら、南国リゾートのようなサービスと心地良さに大満足。一泊をひたすら怠惰に過ごすつもりが、あふれるほどの元気をもらう旅となった。
文/佐藤史子 写真/三川ゆき江
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