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大陸横断鉄道「ザ・カナディアン」の旅

場所
大陸横断鉄道「ザ・カナディアン」の旅

ジャスパー国立公園の湖水地帯を力走するザ・カナディアン

カナディアンロッキーを越える

寝台列車「ザ・カナディアン」(カナディアン号)は世界自然遺産のカナディアンロッキーを越え、北米大陸を横断する。カナダの雄大な自然風景を昼夜の車窓に見る魅力的な鉄道旅だ。

カナダの大陸横断鉄道「ザ・カナディアン」は「オリエント急行」や「氷河特急」などとともに世界でも屈指の名列車。走行距離4466㌔は「シベリア鉄道」に次いで世界第2位の長さ、1950年代製造のヘリテージ(遺産)車両も、「オリエント急行」の1920~30年代製造に次いで古く、歴史的な名車両である。日本、いや、ヨーロッパでも、寝台列車は減少の一途をたどっている中、今もなお堂々たる編成の寝台列車であることがうれしい。

バンクーバー駅
バンクーバーのターミナル駅「パシフィック・セントラル」
バンクーバーのターミナル駅「パシフィック・セントラル」
大陸鉄道の始発駅らしい堂々たる姿、広い待合室。米国シアトル行きアムトラックも発着

現在の「ザ・カナディアン」は、カナダ西海岸のバンクーバーから、東部の大都市トロントまでの全長4466㌔を4泊5日かけて走破している。もちろん全区間乗車したいのは山々だが、休暇や旅程なども考慮し、バンクーバーからジャスパーまでの957㌔をチョイスした。これなら所要時間は約19時間、車中1泊2日の行程で、無理なく乗車できる。しかも、北米大陸横断のハイライト、カナディアンロッキー越えも思う存分満喫できる。ということで、バンクーバーよりジャスパーを目指して出発進行!

ザ・カナディアン
ディーゼル機関車3重連により急峻な峡谷を駆け抜ける

30両編成の長大な列車が東へ

「オール・アボード!」「オール・アボード!」

トレインマネージャーの声がプラットホームに連呼されると、VIAレールカナダの「ザ・カナディアン」は、カナダ太平洋岸の始発駅、バンクーバー・パシフィック・セントラル駅を15時ちょうどにスタートした。

列車の編成は、ディーゼル機関車を先頭に、荷物車、エコノミークラス、ビュッフェ、パノラマカー、食堂車、スカイラインカー、寝台車プラスクラス、プレステージ寝台車クラス、そして最後尾にパークカーを連結した30両編成だ。1両の長さを25㍍で計算すると全長750㍍という、いかにも大陸横断鉄道らしい堂々たる編成である。


スカイラインカー
スカイラインカーは2階建てのパブリック展望車。1階はビュッフェ、2階はガラス張りのドームカー
パークカー展望車
最後尾に連結されたパークパー展望車。一部座席はプレステージ客の指定席となっている
ウエルカム・シャンパン
「ウェルカム・シャンパンをどうぞ」と、サービス・マネジャーのルイーズ

バンクーバーを発車し、スカイラインカーにてウェルカムドリンクを楽しむ頃、列車はバンクーバーの市街地を抜け、フレーザー川の河畔を走行していた。カナディアンロッキーを水源とする全長1300㌔を超える長大な流れだ。

走るにつれ、広かった川幅も狭まり、峡谷の趣を呈するようになっていく。列車は、右に左にカーブを切りながら針葉樹の峡谷を上っていく。「デビルス・ウォッシュ・ベイスン(悪魔の洗い桶)」「ジョーズ・オブ・デス(死の顎)」などというぞっとしない名前の激流を足下に望みながら、さらに、ガラガラヘビも生息するという高温乾燥の準砂漠地帯アッシュクラフトを横断する。

ダイニングカーで牛リブステーキ

やがて太陽が山の端に姿を落とすと、車窓は徐々に暗さを増していき、夜の帳が降りる頃、ダイニングカー(食堂車)にてディナータイム。前菜、メインディッシュ、デザートとも2~3種からチョイスする方式で、私がオーダーしたのは、まず前菜にシュリンプ(エビ)サラダ、メインは牛リブステーキ、デザートはチョコレートケーキであった。

ディナータイムのダイニングカー
ディナータイムのダイニングカー。寝台車の乗客には朝食、昼食、夕食の3食がダイニングカーにてサービスされる
ディナーのメインディッシュ、牛リブステーキ温野菜添え
ディナーのメインディッシュ、牛リブステーキ温野菜添え
寝台車ベッドルーム
ベッドメイキング中の我がベッドルーム。寝具は清潔で快適

大満腹の後、我が寝台個室に戻ってみれば、クルーによってベッドメイキングが施されていた。客室は1段ベッドの1人用個室のほか、2段ベッドの2人用個室、ツインベッドの最高級プレステージ寝台、座席のエコノミークラスなどがある。

シャワーを浴びてベッドに潜り込む。室内灯を消してしばらくして眼が慣れると、車窓には満天の星が浮かび上がった。星空を眺めながら寝台車のベッドでまどろむ幸せを感じつつ、いつしか眠りに落ちてしまったようだ。

ジャスパー国立公園を進む

翌朝、ブルーリバー駅を発車する頃、夜が明け始めた。ベルモント駅にて時計の針を1時間進める。バンクーバーからここまでブリティッシュコロンビア州内は太平洋標準時だったが、この先は山岳標準時だ。カナダには、その先にも、中部、東部、大西洋、さらにニューファンドランド時間帯がある。東部と西部とでは6時間もの時差のある広大な国なのだ。

フレーザー川の峡谷
食堂車の車窓より望むフレーザー川の峡谷
ジャスパー駅
ロッジ風外観のジャスパー駅はジャスパー国立公園の玄関駅
ジャスパー駅
駅前にはカナディアンロッキー越えに活躍したSLを保存

ベルモント駅を発車すると車窓には雪を頂く高峰が現れた。カナディアンロッキーである。最高峰ロブソン山(標高3954㍍)を仰ぐ頃、食堂車ではブレックファーストが始まった。香り高いコーヒーを味わっていると、エメラルドグリーン色の水をたたえた湖が現れた。ムース湖である。溜め息が漏れるほど美しい。

やがてロッキー山脈の分水嶺イエローヘッド峠を通過すると、「ザ・カナディアン」は速度を落としながら進み、間もなく11時になろうという頃、ジャスパー駅に滑り込んだ。ジャスパーは針葉樹の森と湖と高峰に抱かれたカナディアンロッキーきっての人気リゾートだ。ジャスパーの休日を楽しむことにしよう。

文・写真/桜井 寛


旅のインフォメーション

カナダ関連ツアーはこちら

https://www.yomiuri-ryokou.co.jp/kaigai/northamerica/Canada/


交通/バンクーバー国際空港へは成田空港、関西空港から直行便910時間
時差/日本より17時間遅れ(サマータイム期間は16時間遅れ)
ビザ/6か月以内の滞在なら不要。ただし、ビザが免除されている外国籍の旅行者は電子渡航認証(eTA)が必要。カナダ政府の公式ホームページから申請すれば、承認メールが届く
気候/太平洋岸のバンクーバーは年間を通して温暖で、5月~10月は乾季で過ごしやすい。標高1000㍍を超えるジャスパーは朝晩寒い
問い合わせ/VIA鉄道日本公式ホームページ

(出典 「旅行読売」2019年8月号)
(ウェブ掲載 2019年11月1日)

Writer

櫻井寛 さん

1954年、長野県生まれ。フォトジャーナリスト。東京交通短期大学客員教授。著書に「世界鉄道切手夢紀行」(日本郵趣出版)、「列車で行こう! JR全路線図鑑」(世界文化社)など