八重山で過ごす島時間【1日目】
サンゴの海が作った絶景の大地を巡る
冬の沖縄を訪ねるのは何度目だろう。南国らしい日差しが照りつける真夏もいいが、沖縄に行くなら冬から春が実は魅力的だ。風が強く上着が必要とはいえ、日中の気温は20度を超す日が多く、晴れた日は半袖で過ごせる。
さらに言えば、離島がいい。のんびりとした島の人、そして何より、明るい海の色。沖縄本島の海が優しい水色なら、離島は輝くエメラルドグリーンだ。
東京から直行便で約3時間半、石垣空港へ降りる機内から見えたのは、島を縁取る美しい青と緑のグラデーションだった。その海を間近で見ようと、まずは、石垣島の北西部にある川平湾へと向かった。ここは国指定名勝であり、『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』では三つ星を獲得した随一 の景勝地だ。
観光船の受付や飲食店が並ぶ海沿いの遊歩道の奥、赤瓦屋根の川平湾展望台から見えたのは、日差しを受けてトパーズのように眩しく輝く海。あまりの透明度の高さから、浅瀬に浮かぶ船の影がまるで宙に浮いているようにくっきりと白砂底に映っていた。
浜へと降り、グラスボートに乗り込む。船底の窓から海中をのぞくと、貴重なアオサンゴをはじめ、様々な色や形のサンゴの間を踊るように泳ぐデバスズメダイの群れ、イソギンチャクと共生するカクレクマノミなど、亜熱帯の魚が迎えてくれた。
「海底がすぐ近くのように見えますが、5~6㍍の水深があるんですよ。あ! 今のはタマン。こっちはゴマアイゴの群れです。今日は“おいしい魚”が多いですね」。小気味よく解説してくれるガイドの話によると、川平湾が形成されたのはおよそ6000年前。14本の流入河川から森の栄養が注がれ、種類豊富なサンゴと魚介類が生息する。湾内にはサンゴ礁が造った琉球石灰岩の小島が浮かぶが、海面と接する部分は波の侵食を受け、不思議なキノコ状をしていた。
石垣島の地下に眠る鍾乳洞
石垣島の地下に眠る鍾乳洞大地の造形美は、島の南側にある石垣島鍾乳洞でも見ることができる。
行ってみるとそこは、隆起珊瑚と長い年月が作った別の惑星のような神秘的な洞窟。雨水が地中の石灰岩を溶かしてできた炭酸カルシウムが、やがて柱やカーテンのような造形物になるという。
鍾乳洞といえば涼しいイメージがあるが、ここは年間を通して気温が23度と高く、石灰岩が溶けるスピードが早いという。それでも石筍(せきじゅん)などが1ミリ伸びるのには3年を要する。気の遠くなるような時間の「堆積」が、ここにあった。
サンゴ礁の海は豊かな食の恵みも与えてくれる。
夜は石垣市中心部にある「海人居酒屋 源」を訪れた。豪華な刺し身の盛り合わせには、沖縄の言葉でアーラミーバイ(ヤイトハタ)やイラブチャー(ブダイ類)など見慣れない魚も登場。ミーバイを塩で煮たマース煮という郷土料理が絶品で、ふっくらとした白身を噛むと上品な脂のうま味がじんわりとにじみ出た。
フリーパスで巡る石垣バス旅
また、石垣島には絶景スポットが点在する。そのひとつ、バンナ公園は標高約230㍍のバンナ岳にある公園。展望台がいくつもあり、眼下に広がる原生林とその先に、石垣市街や美しい海を一望できる。1月中旬から公園各所で濃いピンク色のカンヒザクラが開花する。
島内を巡るなら、レンタカーか路線バスで。石垣島内の路線バスを運行する東バスではお得なフリーパスを販売している。定期観光バスを除く全路線バスが乗り放題の1日フリーパス(1000円)は乗車時に車内で購入でき、24時間有効。3日以上の滞在なら、5日間で2000円のみちくさフリーパスがおすすめだ。
施設データ
川平湾グラスボート遊覧(まりんはうす ぐるくん)/TEL 0980-88-2898
石垣島鍾乳洞/TEL 0980-83-1550
海人居酒屋 源 総本店/TEL 0980-88-8321
【航空機】
南ぬ石垣空港へ
東京(羽田)から約3時間30分、(成田)から約4時間/名古屋(中部)から約3時間5分/大阪(関西)から約2時間45分/福岡から約2時間15分/那覇から約1時間 ※与那国島へは石垣空港から約35分
【船舶】
石垣港から各島へ
竹富島へ約10分/小浜島へ約30分/西表島へ約40分/波照間島へ約1時間/与那国島へ約4時間
観光の問い合わせ 八重山ビジターズビューロー
TEL 0980-87-6252(平日8時30分~17時30分)※土・日曜、祝日休
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この企画は、沖縄県の協力のもと、制作しました。
(出典 「旅行読売」2020年1月号)
(ウェブ掲載 2019年12月2日)