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日光のクラシックホテル 日光金谷ホテルでひとり優雅に

場所
> 日光市
日光のクラシックホテル 日光金谷ホテルでひとり優雅に

日光金谷ホテルの本館ロビー。創業時は2階に玄関があり、1階部分が増築されたのは1936年

世界遺産・日光の社寺を見て回る

積み重ねられた時が、もてなしや空間から伝わってくる―。一度でいいから、そんなクラシックホテルでのんびり過ごしたいと思っていた。

日光金谷ホテルは「日本クラシックホテルの会」に加盟する9館のなかでも最も歴史のあるホテル。オフシーズンの3月なら、ひとり旅でも手の届くプランがある! 都内からなら交通費も手頃。思い切って出かけてみた。

東武日光駅から世界遺産めぐりバスに乗り、日光山内へ向かう。勝道上人像前でバスを降りると、ひんやりとした神域の空気に包まれた。

立派な杉の木を見上げつつ表参道を上り、日光東照宮へ。江戸時代に建立され、徳川家康公を祀る神社は、昔も今も豪華絢爛な建物や彫刻群で参拝客を引きつける。

なかでも平成の大修理で蘇った国宝・陽明門はすばらしい。508体の彫刻が施された巨大な門にしばし見入り、日の暮れるのも忘れて見とれる「日暮の門」という別名に納得。修復を繰り返しながら積み重ねられた何百年という時の価値を、じっくり味わった。

日光山内をあとにして、名物のゆばそばで体を温め、いよいよ老舗ホテルに向かう。

日光金谷ホテル玄関
大谷石と調和した玄関の回転扉。建物の中に入ると、扉上部に彫刻がある

長い時を重ねたホテルで過ごす、という贅沢

大谷川に架かる朱塗りの神橋(しんきょう)のそば、急な坂道を上った先に、日光金谷ホテルはある。創業は1873年、日光東照宮の楽師だった金谷善一郎が、外国人向けの宿泊施設として開業した。

建物は国の登録有形文化財に登録されている。趣ある回転扉から本館に足を踏み入れると、歴史を感じさせる調度品が並ぶ。フロントカウンターに置かれたライトも、明治時代から使用されているという。

案内された客室からは、男体山と大谷川がきれいに見えた。庭園から河畔まで散策路を歩こうか、玄関にレトロなポストがあったからはがきを書こうか、と思いをめぐらせ、ひと息つく。

日光金谷ホテル部屋
別館3階の119号室。別館にはヘレン・ケラーの泊まった部屋もある

天然氷で供されるウイスキー

館内を歩けばあちらこちらに、創業当時のホテルやゆかりのある人々の写真が掛けられている。

「“昔ながら”を大切にしているホテルですから、写真に写っている昔と今がつながっていることも、実感していただけると思います」と広報の関根崇人さん。ロビーの一角には、アインシュタインやヘレン・ケラーら、宿泊した著名人のサインも展示されている。展示室「金谷の時間」や「蔵出し写真展」を見ながら歴史に浸る。

夕食は本館2階の「メインダイニング」へ。戦前まで使用されていた美しい食器が飾られている。地元の食材を生かしたフランス料理は「昔ながらのやり方で、手間を惜しまず、丁寧に」という関根さんの言葉どおりの味。メーン料理が1品となるプランだが、心身が弾むようなディナーだった。食後はバー「デイサイト」をのぞいてみた。大谷石の暖炉の前もいいが、カウンターに腰かけて、オリジナルのカクテルを注文する。

「女性も男性も、ひとりでいらっしゃるお客さまは多いですよ」とバーテンダー。天然氷で供されるウイスキーには、女性のファンも多いそう。ジャズの響きに包まれて、華やいだ夜を過ごした。

日光金谷ホテルダイニング
本館2階のメインダイニング。ボタンの花などの彫刻が施された柱が目を引く
日光金谷ホテルバー
常時150種以上のウイスキーがそろうバー「デイサイト」

翌日は中禅寺湖まで足を延ばし、中禅寺金谷ホテルで温泉につかった。日光金谷ホテルの宿泊客は半額以下で入れる上に、無料の送迎バスも利用できる。

帰りは日光金谷ホテルから東武日光駅まで、ぶらぶらと大通りを下る。湯沢屋では香りに引かれて酒饅頭(まんじゅう)を購入。ゆばやようかん、日光彫など、門前町での土産探しを楽しんだ。土・日曜であれば、東武鉄道の下今市駅から鬼怒川温泉駅まで運行しているSL大樹(たいじゅ)に乗車するのも一案だ。 

文/内山沙希子 写真/三川ゆき江

林屋のゆばそば
そば処 林屋のゆばそば

日光金谷ホテル

住所:栃木県日光市上鉢石町1300

交通:東武日光駅からシャトルバス10分

℡0288-54-0001

(出典 「旅行読売」2018年4月号)   

(ウェブ掲載 201912月17日)

Writer

内山沙希子 さん

京都生まれ。本や雑誌を作る仕事を求め、大学在学中に上京。その後、美術館やレストラン、温泉宿、花名所、紅葉名所等のガイドブックを中心に、雑誌や書籍の企画・編集に携わる。2017年頃から月刊「旅行読売」で原稿の執筆を開始。「旅行読売」での取材を通して、鉄道旅に目覚めるかどうかは未知数。

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