下徳富駅【札沼線】
豊饒の大地に立つ秘境駅、列車は1日1往復
札沼線の下徳富(しもとっぷ)駅を訪れた。数年前に訪ねた時は1日3往復あった列車は、今や1日たった1往復(※注1)。列車で訪れるのは極めて困難な究極の秘境駅の一つとなり、廃線の危機にもある(※注2)。
札幌中心部から郊外を抜け、石狩川に沿うように走る札沼(さっしょう)線。1972年まで留萌(るもい)線の石狩沼田駅までを結んでいたが、現在は新十津川駅が終着駅。下徳富駅はその一つ手前だ。かつては有人駅で貨物ホームもありにぎわいを見せていたようだが、今はひっそりと静まりかえる。無人にしては広い駅舎と隣に立つレンガ造りの大きな農業倉庫に、往時がしのばれる。
ホーム前の広大な田んぼを挟み、駅を望む。夕張山地の山並みを背にした木造駅舎が、豊饒の大地に浮かび上がる。ここだけでしか見られない、時が止まったような景色が広がっていた。
文・写真/越信行
※注1……2016年のダイヤ改正により浦臼-新十津川駅間の5駅の列車が1日1往復となった
※注2……2020年5月、札沼線の北海道医療大学 ー新十津川駅間の廃止とともに廃駅
札沼線は1935年全線開業。下徳富駅は1934年開業。下徳富駅へは札幌駅から約2時間30分。2020年5月に一部廃止
(出典「旅行読売」2017年9月号)
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