遺跡や教会に秘められたブルガリアの歴史②
一面の美しい壁画に圧倒されるアレクサンダル・ネフスキー寺院
バラの国随一の繁華街
古代遺跡とモダンな建物が混在するブルガリアの首都・ソフィア。聖ペトカ地下教会の見学を楽しんだ後、広場から10分ほど歩いて、次にアレクサンダル・ネフスキー寺院を訪れた。ブルガリアで最も美しいと賞される寺院で、特に夕暮れからライトアップされた姿は幻想的だ。
露土戦争(ロシア帝国とオスマン帝国との戦争)で戦死した兵士を慰霊するため1912年に建てられた。500年もの間、オスマン帝国の支配下にあったブルガリアは、露土戦争の勝利によって独立できたが、ロシアやブルガリア、そのほかの国からも多くの戦死者を出したという。そんな歴史を知ったうえで見学すると感慨深い。
ソフィアのメインストリートといったら、ヴイトシャ山を望むヴィトシャ通り。モダンなカフェやレストランが並ぶ繁華街だ。ブルガリアはバラの一大産地で、ローズオイルの香水や石けんを売る店も多い。土産の定番であるバラの石けんを買い、帰国後の今も甘いローズの香りを楽しんでいる。
山懐に抱かれた世界遺産へ
ソフィアからバスに揺られて約2時間30分。リラ山脈の奥地にたたずむ世界遺産・リラ修道院を訪ねた。門をくぐると、五つのドームをもつ縞模様の聖母教会が目の前に。回廊には極彩色のフレスコ画がびっしりと描かれ、イエス・キリストや聖母マリア、聖人の姿もある。教会内には、まばゆいばかりの黄金のイコノスタシス(祭壇部と一般信者席とを分ける壁)と、修道院の創設者であるイヴァン・リルスキの聖遺物があった。左手の骨の一部だけガラス張りになっていて、ガラス窓に信者がキスをしていく。
敷地内には、いくつかミュージアムもある。歴史ミュージアムには、完成に12年の歳月を費やした「ラファエルの十字架」が展示されており、その緻密さに心を奪われる。制作者は目を酷使したせいで、その後に失明したといわれている。
定番スイーツ店巡り
もう一つ、19世紀の古いキッチン・ミュージアムは、大きなかまどや調理道具の歴史を紹介する博物館。当時は、牛一頭分入る大釜と人間の身長くらいある木製スプーンで調理していたそうだ。遠足で来ていた小学生たちも興味津々な様子。スマートフォンでカシャカシャと何枚も撮影していた。
ミュージアムのすぐ近くにあるサモコフ門を出ると、土産店やドーナツ屋などが軒を連ねていた。ヨーグルトを練りこんだ揚げパン「メキツァ」を売る店もある。中はモチっと、外はカリっと、粉砂糖をふりかけて食べる定番スイーツ。いくつでも食べられそうなおいしさ。大量買いしている人もいた。
ドーナツを買ってみようと列に並ぶものの、時計を見るとソフィアへ戻る最終バスの出発5分前。ビニール袋に入れてもらい、急いでバスに乗り込んだ。帰路、のどかな山の景色を眺め、車中でドーナツをほおばりながら、リラ修道院の鮮やかなフレスコ画を思い返した。
文・写真/石口早苗
問い合わせ
駐日ブルガリア共和国大使館
https://www.mfa.bg/ja/embassies/japan
(出典 「旅行読売」2020年5月号)
(ウェブ掲載 2020年4月30日)
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