古墳大国・群馬へ歴史トリップ
きれいに整備された保渡田古墳群。写真手前が二子山古墳、奥が八幡塚古墳
古墳1万3000基以上
かつて群馬県には1万3000基以上の古墳があったという。まさに古墳大国だ。その中でも、前々から訪れたいと思っていたのが、高崎市にある保渡田古墳群だ。CMで見て伝わってきたスケール感を、実際に感じてみたかった。
高崎駅前から、市内循環バスぐるりん大八木線・北高先回りに乗り、井出町西バス停で降りると保渡田古墳群まで徒歩10分。古墳へ向かう前に、隣接するかみつけの里博物館で少し古墳について勉強することに。
本物の出土品が間近に
保渡田古墳群は八幡塚、二子山、薬師塚の前方後円墳3基の総称で、5世紀後半~6世紀初頭に造られた。榛名山東南麓を治めていた豪族の墓で、発掘調査をもとに整備、復元された。国指定史跡に指定されている。盗掘にあい副葬品はわずかしか出土していないが、埴輪や土器はかみつけの里博物館に保存展示されていた。
「榛名山噴火による泥流で、一帯は4㍍~6㍍も火山灰に埋もれていました。そのため遺構は風化せず、土器や埴輪が大量に残っています」と学芸員の横山千晶さんが教えてくれた。
6000本の埴輪が迎えてくれる
崩れた破損部分は盛り土を施し、約39万8000個の葺石を敷き詰めて復元。女優・吉永小百合さんが出演していたJR東日本のCMでは、この美しい前方後円墳の空撮映像が流れたが、吉永さんは来ていない。それでも、週末には1000人近い見学客が来るという。
八幡塚古墳に上がってみる。榛名山が間近に迫り、墳丘を取り巻くように悪霊から墓を守る6000本の埴輪が並んでいる。墳丘長96㍍の後円部に石室への入り口があった。石棺展示室へ下りると本物の舟形石棺があり、一部崩れた石棺の蓋が荒っぽい盗掘の歴史を物語っていた。
50㍍ほど離れた二子山古墳にも上がってみた。榛名山を背に横たわる八幡塚古墳の全容を見渡せる。夕暮れの優しい光に照らされ、列をなす埴輪の土色がひと際濃い。古墳の旅は想像を楽しむものと言うが、刻々と表情を変える古墳を見ていると、自分に何かを語りかけているように思えてきた。
文/松田秀雄
施設データ
かみつけの里博物館
TEL027-373-8880
https://www.city.takasaki.gunma.jp/docs/2014010701664/
(出典 「旅行読売」2020年5月号)
(ウェブ掲載 2020年5月18日)