南会津の渓谷沿いを快走する、お座トロ展望列車(2)
西若松―会津若松は水田地帯が広がる。秋には辺り一面が黄金色に輝く
橋梁から渓谷美を堪能、後半は田園地帯を走る
会津鉄道には鉄橋が多い。景色は緑のトンネルと渓谷の連続で、飽きることがない。
塔のへつり駅を出てすぐ、阿賀川に架かる第五大川橋梁の上で列車が停まった。「空中に浮かんでいるみたい」。乗客らが手すりから身を乗り出すようにして景色に見とれる。
「湯野上(ゆのかみ)温泉―芦ノ牧温泉駅間の2か所の鉄橋でも一時停車します。それから、間もなくトンネルが続きますが、車内の照明は消しますので」と福田さん。
トンネル内でライトダウンすると、トンネルの壁面に芦ノ牧温泉駅のネコ駅長「らぶ」などを題材にしたアニメーションが映し出された。「大手鉄道会社さんの 観光列車のような投資はできませんが、創意工夫と手作り感を大切にしています」と会津鉄道営業課長の渡部浩二さんは話す。
「牛乳屋食堂」の名物、ソースカツ丼駅弁
芦ノ牧温泉駅を出ると、景色はのどかな田園光景に変わる。田植えが済んだ水田に、周囲の山並みが映り込む。福島県は米の生産量全国6位(2018年)の米どころ。
そういえば予約した弁当を食べていないことに気づいた。松茸二段弁当と悩んだ末に選んだのは「ソースカツ丼駅弁」。芦ノ牧温泉駅近くの行列ができる人気店「牛乳屋食堂」の名物メニューだ。煮立ったダシにつけてから秘伝のソースをかけたという会津豚の肩ロースのトンカツが、地元産コシヒカリのご飯にドーンと載る。
会津若松駅着は13時28分。会津田島駅からの帰りの東武特急の出発時刻まで4時間近くある。それまで鶴ヶ城を見学しようか、それとも芦ノ牧温泉駅の「らぶ」に会いに行こうか......。思案の結果、湯野上温泉駅で下車して大内宿に行くことに決め、隣線に停まっていた会津田島行きの快速列車に乗り込んだ。
文・写真/天野久樹