足尾駅【わたらせ渓谷鐵道】
100年間の栄枯盛衰がにじむ木造駅舎
関東に降っていた雪がやんだ早朝、車窓の雪景色を楽しもうとわたらせ渓谷鐵道へ向かった。
大間々(おおまま)駅から乗った列車は、雪化粧した渡良瀬(わたらせ)川を車窓に見ながら山間部へと分け入っていく。春には桃源郷としてにぎわいを見せる神戸(ごうど)駅を過ぎ、全長5242㍍の草木トンネルを10分ほどで抜けると、一面を雪で覆われた草木湖の絶景が広がった。
やがて列車は終点から一つ手前の足尾駅へ。木造駅舎はわたらせ渓谷鐵道の前身、旧足尾鉄道時代に開業した当時のもの。わたらせ渓谷鐵道で国の登録有形文化財に登録されている38施設の一つに数えられる。
板張りの壁や国鉄時代の駅名標などに歴史と風格が漂い、青空の下、雪をまとった駅舎が白い山肌を背に一段と映えていた。銅山でにぎわっていた頃に思いを馳せ、再び列車に乗り込んだ。
文・写真/越信行
旧足尾鉄道は1914年に全線開業、足尾駅は1912年開業。足尾駅へは両毛線桐生駅からわたらせ渓谷鐵道普通で1時間30分
(出典「旅行読売」2017年2月号)
(ウェブ掲載 2020年6月19日)
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