涼風吹く釧路湿原を走る くしろ湿原ノロッコ号(2)
細岡展望台から見る釧路湿原の眺め。釧路湿原駅から徒歩20分ほど
野生動物とも出合える日本最大の湿原へ
釧路湿原の面積は約2万2000ヘクタール、日本最大の湿原だ。特別天然記念物のタンチョウを始めとした鳥類、固有種を含む動植物の宝庫であり、一部はラムサール条約に登録されている。車窓には開けた草原と輝くような新緑の森が繰り返し現れ、ほぼ人家のない景色がこんなにも続くことに驚く。
その名も釧路湿原駅で停車すると、ログハウスの可愛らしい駅舎が見えた。森の中に立つ小屋はまるで童話の世界。ここから徒歩20分ほどの高台にある細岡展望台からは、釧路湿原とそこを蛇行する釧路川の景色を一望できる。
細岡駅を過ぎ、あと一駅で終点かと名残惜しく思っていると、車窓はさらに湿原らしさを増してきた。左に釧路川の川面が光り、カヌーで川下りを楽しむ人が手を振っている。「シカだよ!」という誰かの声に振り向くと、草むらの中からエゾシカがぴょこんと顔を出していた。沿線ではタンチョウやキタキツネに出合えることもあるそうだ。
終点、塘路(とうろ)駅まで約50分、あっという間の出来事に思えた。ここから先、川湯温泉へ乗り継いで1泊してもいいし、塘路の駅舎にある喫茶店ノロッコ&8001でレンタサイクルを利用するのもいい。カヌーで釧路川を下り、釧路湿原駅からノロッコ3号に乗る欲張りなプランもありだ。あるいは 1日3回乗るのも悪くない。もっともっと乗っていたい、そんな気持ちだった。
文/春日明子 写真/永井泰史
(出典「旅行読売」2019年8月号)
(ウェブ掲載 2020年6月18日)
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