武州日野駅 【秩父鉄道】
SLの汽笛が空気を揺らし、シダレザクラの枝もそよぐ
沿線の春の花を愛でようと秩父鉄道の始発羽生(はにゅう)駅へ。
3両編成の列車は温かな日差しを浴びる田園地帯を走る。大麻生(おおあそう)駅手前の桜並木を抜け、美しい荒川の流れを車窓に望むと、沿線随一の絶景ポイント親鼻鉄橋を渡って行く。秩父の市街地を抜けると終点の三峰口駅に着いた。
折り返し列車で、桜が目に留まった武州日野駅へ。木造の古い駅舎にはレトロな改札口があり、駅員さんが温かく迎えてくれた。4月上旬に大きなシダレザクラが満開を迎え、線路脇のレンギョウとともに彩りを添える。近くの弟富士山(おとふじやま)の山麓にあるカタクリ群生地では、紫色のかれんな花が春の訪れを告げていた。
秩父鉄道にはSLパレオエクスプレスも走り、鉄道ファンに人気だ。荒川の谷間に響く汽笛が、どこか懐かしく胸に響く。
文・写真/越信行
※SLパレオエクスプレスは2020年は機関車の検査のため運行しない。
秩父鉄道は1930年全線開業。武州日野駅は同年開業。武州日野駅へは東武伊勢崎線羽生駅から秩父鉄道で1時間45分、上越新幹線熊谷駅から同1時間20分
(出典 「旅行読売」2017年4月号)
(ウェブ掲載 2020年8月27日)
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