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神楽坂――坂道と石畳の路地を歩き、歴史を感じる味巡り

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神楽坂――坂道と石畳の路地を歩き、歴史を感じる味巡り

兵庫横丁は戦国時代に武器庫があったことが名の由来。数々の作品が生まれた旅館・和可菜は、2016年に閉館した


多くの人でにぎわう表通りから、歴史が薫る横丁、石畳の路地へ。のんびり歩く先々で、どこか懐かしい味に出会えるのが、神楽坂の魅力だろう。休日の午後に歩行者専用道路となる神楽坂下交差点から赤城神社前交差点まで、およそ800㍍。コンパクトな街だから、いつでも気軽に出かけられる。

神楽坂下からケヤキ並木の坂道に入るとすぐ右手に見えるのが、甘味処の紀の善。歩き始めたばかりだが、迷わず入って抹茶ババロアを注文したい。「おいしいあんを食べて欲しい」という女将の冨田惠子さんの言葉どおり、あんが絶品。このあんを濃厚な抹茶ババロアが引き立て、口溶けのいい生クリームが包み込む。味の決め手は「いい材料をたっぷり使うこと」、そして「粋であることを大切にしています」との言葉に納得。

かくれんぼ横丁

散策を再開し、坂道を上って右に折れる。神楽坂仲通りからかくれんぼ横丁に入ると、趣のある石畳の路地が奥へ、奥へと延びている。この辺りは江戸時代、旗本の屋敷が立ち並んでいた場所だ。本多家の屋敷があったことから名が付いた本多横丁を通り、軽子坂を経て、兵庫横丁へ。多くの作家に愛された旅館・和可菜を過ぎると、道幅がさらに狭くなる。

路地の先に現れる階段を上ったり下りたりしながら、寺内公園に向かった。かつての行元寺の境内にあたり、ここに発生した岡場所(私娼地)が、花街としての神楽坂の歴史につながっているのだ。ベンチに腰かけ、ひと息つけば、秋風が心地いい。江戸時代の門前に並んだ屋台見世を想像するうち、何か食べたくなってきた。

兵庫横丁に戻り、神楽坂おいしんぼ 本店でランチにする。花街の料亭の風情が残る建物で、京都直送の湯葉と生麩を中心に「季節が感じられる料理を出しています」と料理長の芦沢卓也さん。人気の京舞は、湯葉クリームコロッケ、巻き湯葉、湯葉あんかけご飯、湯葉椀と湯葉尽くし。この日は春菊と菊のおひたし、焼きナスの煮びたしも膳にのり、秋が漂う。ボリューム満点だがやさしい味わいで、お腹にするりと収まった。

寺内公園

歴史を重ねた街ならではの定番・新顔の味を求めて

石畳の路地から神楽坂通りに出て、毘沙門天善國寺にお参り。1595年に日本橋馬喰町で創建されたのち、たびたび火事に見舞われ、1793年に神楽坂へ移転してきたという。参拝客のにぎわいは今も変わらず、年間を通してさまざまな祭りが開催される神楽坂のシンボルであり続けている。

善國寺の東側の路地に入ると、メロンの果皮を思わせる外観が目を引いた。「果房 メロンとロマン」は、2020年7月7日にオープンした青森県つがる市のアンテナショップ。特産品のメロン5品種を五感で体験できるほか、充実したメニューがカフェでもテイクアウトでも楽しめる。新店を取り込んでいく街の懐の深さを感じつつ、見番横丁を歩き、神楽坂通りへ戻る。再び坂道を上れば、大久保通りと交わる神楽坂上交差点だ。

果房 メロンとロマン。「オリジナルメロンink」や「メロンを感じるコースター」などがあり、視覚や触覚でもメロンが味わえる

五十番の肉まん、コパンのシュークリーム、亀井堂のクリームパン……。散策土産は何にしようか、思案しながら歩いていると、コボちゃん像を発見。4コマ漫画「コボちゃん」の作者である植田まさしさんが神楽坂在住という縁から、2015年にお目見えし、すっかり街の風景に溶け込んでいる。通りの先に赤城神社前交差点が見えたら、ゴールの神楽坂駅はもうすぐ。

駅の周辺にいくつかある書店をのぞいてみた。神楽坂という街は、花街としての風情を残す一方で、印刷業や出版業の盛んな本の街でもある。さらに旧東京日仏学院があることから、フレンチの店が多いという特色も持っている。

グルメ散策の最後は、ボン・グゥ 神楽坂へ。「気軽にフレンチを楽しんでもらいたくて、前菜を主役にしたんです」とシェフの野口尚人さん。ズワイガニとカマンベールチーズのキッシュなど、彩りと滋味にあふれる前菜を、グラスワインとともにいただく。神楽坂の味を堪能した、濃密な一日を締めくくった。


文/内山沙希子 写真/齋藤雄輝

 

神楽坂グルメ

紀の善(甘味)
もともとは料理屋だったが1948年から甘味処になった。名物の抹茶ババロアは891円。秋~冬は粟ぜんざい、鴨ぞうすいなどもおすすめ。
TEL:03-3269-2920
11時~19時30分、日曜、祝日は11時30分~17時/月曜休/新宿区神楽坂1-12 紀の善ビル


神楽坂おいしんぼ 本店(和食)
料亭を改装した一軒家で、湯葉や生麩が味わえる。ランチの京舞は1980円、夜のコースは3850円~。カウンター席、座敷のほかに個室も。
TEL:03-3269-0779
11時30分~14時、17時30分~22時/無休/新宿区神楽坂4-8


果房 メロンとロマン(カフェ)
青森県つがる市運営のメロン専門工房。市で生産するメロン5品種を中心に提供。フルーツサンドやジェラートフラッペはテイクアウトもできる。
TEL:03-6280-7020
11時30分~17時30分/月・火曜休/新宿区神楽坂3-6-92


フレンチ前菜食堂 ボン・グゥ 神楽坂(フレンチ)
前菜が主役で、シェフおまかせのボン・グゥ盛りはハーフで2090円。タルトフランベ990円~などメニューは40種ほど。ランチも好評。
TEL:03-3268-0071
11時~14時、17時~22時/月曜・第3火曜休/新宿区矢来町107 細谷ビル2階

紀の善
神楽坂おいしんぼ 本店
果房 メロンとロマン
フレンチ前菜食堂 ボン・グゥ 神楽坂

問い合わせ

●新宿観光振興協会 TEL:03-3344-3160

●毘沙門天 善國寺 9時~17時/TEL:03-3269-0641

 

■徒歩約35分(約1.7㌔)
飯田橋駅(地下鉄有楽町線・南北線B2a出口)【スタート】
 ↓ 5分(250㍍)
かくれんぼ横丁
 ↓ 4分(200㍍)
兵庫横丁
 ↓ 3分(150㍍)
寺内公園
 ↓ 3分(150㍍)
毘沙門天 善國寺
 ↓ 5分(250㍍)
見番横丁
 ↓ 6分(300㍍)
神楽坂上交差点
 ↓ 3分(150㍍)
コボちゃん像
 ↓ 4分(200㍍)
神楽坂駅(地下鉄東西線)【ゴール】

 

(出典「旅行読売」2019年12月号)

(ウェブ掲載 2021年1月18日)

 

Writer

内山沙希子 さん

京都生まれ。本や雑誌を作る仕事を求め、大学在学中に上京。その後、美術館やレストラン、温泉宿、花名所、紅葉名所等のガイドブックを中心に、雑誌や書籍の企画・編集に携わる。2017年頃から月刊「旅行読売」で原稿の執筆を開始。「旅行読売」での取材を通して、鉄道旅に目覚めるかどうかは未知数。

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