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植田まさし「コボちゃん」と歩く神楽坂

場所
> 新宿区
植田まさし「コボちゃん」と歩く神楽坂

神楽坂は「コボちゃん」が生まれた町

読売新聞朝刊で連載中の4コマ漫画「コボちゃん」。作者の植田まさしさんが連載開始前から仕事場兼住居を構えるのが神楽坂だ。神楽坂駅前の案内板には「コボちゃん」のイラストが描かれ、商店街の歩道には刈り上げ頭の少年の銅像が立つ。ゆかりの神楽坂の魅力を植田さんに語ってもらった。


コボちゃん一家が暮らすのは世田谷区です。作品に新宿区の神楽坂が出てくるわけではありませんが、イラストや銅像は、作者の私が約40年ずっと暮らしてきたご縁で、商店街の方に頼まれ、少しでも地元振興のお役に立てればとお受けしました。

「コボちゃん」は〝神楽坂生まれ〟。1982年にこの街で第1回を描き上げてから1万3300回以上(2019年10月現在)、ほぼ毎日描き続けてきました。私自身は世田谷の奥沢で生まれ、都内や埼玉を転居してきたのですが、付き合いのある出版社が近いという理由で引っ越してきて以来、ここで暮らしています。

「コボちゃん」は初めてづくしでした。初めての新聞連載で、朝読んで気持ちよく出かけてもらいたいという思いで、初めて子どもを主人公にしました。

ネタは仕事部屋で座って考えます。昔なら辞書や百科事典、電話帳がネタ元。書かれている言葉や職業がヒントになります。今はインターネットがあるので便利です。例えば、「家」を検索すると画像が色々出てきます。家も玄関、居間、台所、庭など諸々の要素があって、そのうち一つを選んで描くんです。手を動かさないとダメ。まずは描いてみる。描いているうちに「見つける」という感覚です。4コマ目のオチが定まると、ほかの三つも決まります。

神楽坂
街の風景に溶け込んでいるコボちゃん像

真夜中の神楽坂さんぽ

毎日の時間割がはっきり決まっていて、必ず深夜に散歩します。10時半に起床、14時半頃までに翌日分の「コボちゃん」を描き上げ、15時頃に朝食。その後、別の仕事をして20時頃に夕食をとり、日付が変わって0時30分から運動不足解消のため散歩に出かけます。

コースは、神楽坂の坂下まで下って飯田橋交差点の五叉路から戻ってきたり、早稲田や江戸川橋の方を回ってきたり、その日の気分。コンビニで夜食のおにぎりやパンを買って帰り、就寝は3時30分。このサイクルはずっと変わりません。お酒を飲まないこと(酔うと仕事になりません)、ちゃんと考えること(その時間の長さはアイデアの質に比例します)、そして仕事を始めるにあたってしっかり準備することが、長く続けてこられた秘訣かもしれません。

昼に出歩くこともあります。この街は神楽坂上交差点の上と下でかなり雰囲気が違います。交差点の下は商業的でにぎやか。歩いていて飽きないし、路地に入ると昔の花街の雰囲気が残っています。旅館だった和可菜(わかな)の辺り、かくれんぼ横丁の辺りの石畳の路地が、一番神楽坂らしい風景かもしれません。おいしい店も多くて、鳥茶屋のうどんすき、ル・ブルターニュのガレット(そば粉のクレープ)は時々食べたくなります。

一方、交差点の上はスーパーもあって、落ち着いていて地元感、生活感が感じられます。最近は「奥神楽坂」と紹介されるエリアでもあり、店も増えているようですね。

坂のある町は好きです。神楽坂は坂の下から見上げたときの感じがなんとも言えずいいんです。車道と歩道の広さ、店の大きさ、ケヤキ並木、見えるところ全部がマッチしているように感じます。だから今計画されている道路拡張工事には反対です。道が広くなれば信号のあるところでしか渡れなくなる。左右を行き来できる今の道の広さがにぎわいを生み、良さになっていると思うんです。このままの神楽坂であり続けてほしいですね。

聞き手/福崎圭介

(出典 「旅行読売」2019年12月号)

(ウェブ掲載 2021年1月2日)

仕事場
神楽坂の仕事場と植田まさしさん
四コマ漫画
毎日1万3300回以上、このペン先から作品が生まれ続けている

Writer

福崎圭介 さん

新潟県生まれ。広告制作や書籍編集などを経て月刊「旅行読売」編集部へ。編集部では、連載「旅する喫茶店」「駅舎のある風景」などを担当。旅先で喫茶店をチェックする習性があり、泊まりは湯治場風情の残る源泉かけ流しの温泉宿が好み。最近はリノベーションや地域再生に興味がある。趣味は映画・海外ドラマ鑑賞。