地元で愛される隠れ家温泉 温泉センター諏訪ノ湯【群馬県みなかみ町】
「う~、いい湯だ~」。脱衣場で入浴の準備をしていたら、恍惚感に満ちた声が浴室から漏れ聞こえてきた。どれほどいい湯なのか、期待が膨らむ。
浴室に入ると、壁面が岩で覆われた大人5~6人程度が入れそうな内湯のみ。岩の間から源泉がこんこんと流れ出ている。無色透明でにおいはわずか。露天はなく、窓は高い位置なので景色はほとんど見えない。シャンプーやせっけんの備え付けもなく、カランだけの何もない浴室だ。
群馬県北部にあるみなかみ町の温泉といえば、大規模な宿が軒を連ねる水上温泉や猿ヶ京温泉、小さな湯宿が多い湯桧曽(ゆびそ)温泉や湯宿(ゆじゅく)温泉、山奥の一軒宿の法師温泉や宝川温泉など、多様な「みなかみ18湯」で知られる。ここはそれらの温泉とは一線を画した日帰り温泉で、「ひたすら温泉を楽しむための温泉」とでも言うべきだろうか。
場所は関越道水上ICに近い利根川のほとり。最寄りの道路は県道61号で、交通の便は悪くない。しかし県道にある看板は小さく、見落としやすいので注意が必要。県道から折れた路地を進み、さらに曲がった細い道の先に年季の入った旅館風の玄関が見えてくる。
かけ湯をしてから、さっそく入浴。「う~ん」。気持ち良さに思わず声が出てしまった。41℃と適温のかけ流しで、じんわりと汗が出てくる。源泉は浴室の外の駐車場の一角から湧いており、空気に触れることなく浴槽に注がれている。
カルシウム-硫酸塩温泉の湯は肌にさらっとなじみ、湯上がりは爽快ながらもポカポカ。先客の年配の男性は毎日、朝一番で入浴に来ているという。
湯上がりにロビーで休憩していると、受付にいた大塚恵美子さんが「飲泉もできますよ」と教えてくれた。ロビーに飲泉場があるので、ひと口飲んでみた。カルシウムを含んでいるので、やや苦みはあるものの慣れれば問題ないだろう。
「お父さんは温泉を飲んでいて、病気をしたことがないんです」と、開業以来36年、夫婦で切り盛りしている大塚さんが言う。体の内からも外からも温泉の効果を実感しているようだ。
浴槽は毎日お湯を抜いて掃除しているそうで、朝一の湯はなおさら新鮮に感じたのだろう。午前中から常連客が引きも切らないのは、そういったこともあるのかもしれない。露天風呂もサウナもジャグジーもないが、新鮮で効能豊かな温泉を求める人はやって来る。
みなかみ町高日向448-30
TEL:0278-72-2056
【営業】9時~19時(最終入場18時30分)/木・金曜休(祝日の場合は営業)/350円
【交通】関越道水上ICから2.5キロ/上越線上牧駅からタクシー5分(徒歩30分)