名水と涼景を求めて鳥取へ “ひんやり” 夏の大山山麓めぐり(1)

マイナスイオンをたっぷり浴びながら木谷沢渓流を散策
中国地方最高峰・大山(だいせん)の麓には、清らかな渓流と名峰が育む湧水が点在する。開創1300年を誇る大山寺や豊富な天然水を使った美味巡りも楽しみ。今夏は、涼を求めて、鳥取・大山山麓へ。
深緑の清流散策で癒やし時間
西日本最大級のブナ林が広がる大山。落ち葉や腐葉土が重なる土壌や火山性の地層が天然のフィルターとなり、雨水や雪解け水は、適度にミネラルが溶け込みながらゆっくりとろ過され、雑味が少なく口当たりのよい清らかな軟水となる。特に日本有数の雨と雪の量を誇る南麓の奥大山は水量が豊富で、サントリーなどの採水地があることで知られている。
まずは奥大山の水源地に近い木谷沢渓流へ向かう。江府町ガイド養成講座「奥大山検定」を受講・合格したガイドによるツアーがおすすめだ。清らかな水をたたえる渓流沿いを、動植物をはじめ、奥大山にまつわる解説を聞きながら歩く。1時間ほどの手軽なツアーだ。木漏れ日の中、渓流をわたる涼風がなんとも心地いい。
「水源地に近く天候による水量の変化が少ないため、川の中の岩の上にコケだけでなく植物が生えている珍しい光景が見られます」とガイドの佐藤幹太さんが教えてくれた。ちなみに、大山の人気ビュースポットの一つで、荒々しい山容を眺望できる鍵掛(かぎかけ)峠の展望台までは、木谷沢渓流から車で5分ほどだ。
「ブナの木は保水力が高く、地下水の安定供給に寄与します」と奥大山の自然の魅力を語る佐藤さん
のんびりと1時間。ところどころで足をとめ、渓谷沿いの植物を観察する
木谷沢渓流ガイドツアー
■江府町御机大平原837-13(エバーランド奥大山)/TEL:0859-75-6007(江府町観光協会)/1人1時間2000円~(申し込みは1人~、要予約)/集合はエバーランド奥大山。伯備線江尾駅からタクシー25分。米子道江府ICから15キロ
大山東麓、環境省の「日本の滝百選」に選定された大山滝も訪れたい涼スポットだ。一向平(いっこうがなる)キャンプ場からアップダウンのあるハイキングコースで片道約1時間。大山滝は落差42メートルの二段滝で、轟音をたてて流れ落ちる姿は見ごたえ十分。コースの途中には高さ約30メートルのつり橋もあり、橋上から渓谷の絶景を楽しめる。
鳥取を代表する名瀑・大山滝。遊歩道があり、滝つぼ付近まで下りられる
大山滝
■琴浦町野井倉/TEL:0858-55-7811(琴浦町観光協会)/一向平キャンプ場へは山陰線浦安駅からタクシー30分。山陰道琴浦東ICから17キロ
高原の別天地と大山仰ぐ美術館
次に西麓、大山桝水(ますみず)高原を目指そう。ここから見る山容は鍵掛峠とは異なり、「伯耆(ほうき)富士」と呼ばれる美しい円錐形(えんすいけい)の大山の姿が望める。「大山ますみず高原 天空リフト」が運行し、高原の清涼な風を受けながら2人乗りリフトにゆられて空中散歩を楽しむこと8分、標高約900メートルの山頂展望台に到着する。
見る角度でまったく違う表情を見せる大山
「恋人の聖地」とも呼ばれ、開放感あふれる緑の高原の先に、弓ヶ浜半島や日本海まで一望。胸をすくような大パノラマが広がる。ベンチやハンモックが置かれ、ゆったりと過ごせる。8月の土曜は19時まで営業し、日本海に沈むロマンチックな夕日も眺められる。
標高900メートルからの絶景。天気がいい日は隠岐(おき)の島まで眺められる
リフトで山頂駅へ。高原をわたる風が爽やか
人気の「愛鍵」(1100円)
大山ますみず高原 天空リフト
■伯耆町大内桝水高原1069-50/TEL:0859-52-2228/往復1500円/9時~17時(8月の土曜は19時まで延長)/冬季休(悪天候の場合は運休あり)/伯備線伯耆溝口駅からタクシー12分。米子道溝口ICから6.5キロ
天空リフトから車で西へ12 分ほどの場所にある植田正治(しょうじ)写真美術館で、大山を体感するのもいい。境港市出身の世界的写真家・植田正治の作品を展示する。山陰の自然を題材に、被写体をオブジェのように配する植田の作品は、フランスをはじめ、世界で「植田調」という言葉で高く評価されている。
2階には水面に「逆さ大山」が映る撮影スポットがあり、ステッキや傘などの小物を使い、のびやかな稜線を描く清々しい姿の大山とともに遊び心ある「植田調」の写真撮影が楽しめる。
大山と逆さ大山とともに記念撮影
9月7日まで企画展「植田正治・写真を楽しむ」を開催。山陰の風景や暮らす人々を撮影した作品がテーマ
風景と調和したモダンな建物は、建築家の高松伸(しん)が設計
植田正治写真美術館
■伯耆町須村353-3/TEL:0859-39-8000/1000円/10時~16時30分/火曜(祝日の場合は翌日)、12月11日~2月末日、展示替期間中は休/伯備線岸本駅からタクシー5分。米子道米子ICから6.5キロ
名水と涼景を求めて鳥取へ “ひんやり” 夏の大山山麓めぐり(2)へ続く
協力:鳥取県東京本部
※記載内容はすべて掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2025年9月号)
(Web掲載:2025年7月28日)