至福の貸切露天 平鶴【熱海網代温泉】
網代湾に面した貸切露天風呂「潮彩」
海にせり出す露天風呂と仲買人が腕をふるう海鮮料理
伊東線網代(あじろ)駅から歩いて5分。磯料理・海辺の湯の宿 平鶴(ひらつる)は、海に突き出すように立っている。
「貸切風呂を作ったのは15年ほど前です。どうせなら宿で一番景色のいい場所に設置しようと、右に網代岬、左に真鶴半島、その中心を向くようにしたんです」
3代目の川口健(たけし)社長はこう話す。自慢の景色を見ようと、さっそくフロントで貸切風呂の利用を申し込んだ。45分で3850円(4人まで)。事前予約はできないが、空いていれば宿泊者以外でも日帰りの利用(11時~19時)が可能だ。
大きな湯船には源泉かけ流しの透明な湯があふれる。平鶴は地下300㍍から2本の源泉を引いているが、大浴場の内風呂と貸切風呂の湯は同じ源泉で〝成分が濃く、よく温まる〟と評判だ。トロトロの湯につかってゆっくり手足を伸ばすと、まるで海に浮かんでいるような開放感に包まれる。こんなゆったりとした時間を家族や友人お風呂を〝独泉(どくせん)〟できるとは、とびきりのぜいたくである。
大浴場の露天風呂からの眺望も抜群。大浴場も1100円で日帰り利用(11時~16時、18時~19時45分)ができる。
朝一番の源泉かけ流しの温泉を堪能
網代駅までは東京駅から1時間半弱。日帰りでも眺望と上質の温泉を十分楽しめるが、今回はぜひとも宿泊したい理由があった。
一つは新鮮な魚介類たっぷりの夕食である。平鶴では、伊勢エビ、タイ、カンパチなど地の魚介類を六つの生け簀(す)で保存、料理の直前にさばいて提供しているという。聞けば、初代は魚屋さんで、1984年に旅館を開業する前には2代目が料理店を営んでいた。今も網代港で仲買をやっており、いい魚を吟味し、安く手に入れることができるわけだ。「あわびの踊り焼き」や「伊勢エビ」付きでも1万円台のプランが何種もある。
二つ目は、朝風呂である。「大浴場、貸切風呂ともに、23時にはすべての湯を抜いて清掃し、翌朝新しい源泉を入れています」と前出の川口社長。大浴場は朝5時、貸切風呂は6時30分に開く。入れたての湯を味わってみたかった。
翌朝、早起きして露天風呂に向かった。うっすらと明るくなっていく海を見ながら一番風呂につかる。入れたばかりの湯は、気のせいか、肌触りもいい。じんわりと心まで温まっていくようだ。
平鶴には、送迎バスとオーシャンフロントの観覧席が付いた「熱海海上花火大会無料送迎プラン」(2万6000円~)もある。熱海海上花火大会は、春、夏、秋、冬と年間10回以上開催されている。会場の熱海湾は、3方を山に囲まれており、海で上げる花火の音が反響して独特の音響効果がある。特等席でゆったり見物すれば、ぜいたく尽くしの旅になるだろう。
文/高崎真規子 写真/三川ゆき江
住所:静岡県熱海市下多賀493
交通:伊東線網代駅から徒歩5分/東名高速厚木ICから70㌔
問い合わせ:0557-67-2221
料金:1泊2食平日1万3350円~、金・日曜、祝日1万9950円~、休前日2万3250円~(日帰り入浴1100円) ※掲載時の料金。公式ホームページを要確認
客室:22
貸切風呂:露天風呂1(45分3850円)/当日先着順(11時~19時は日帰りでの利用も可能。※料金・時間は掲載時の情報)
(出典「旅行読売」2022年2月号)
(WEB掲載 2022年3月23日)