駅舎のある風景 河辺の森駅【近江鉄道本線】
近江盆地の田畑の中に立つ、いきものの森への最寄り駅
夏も終わりに差し掛かった頃、近江鉄道本線を巡る旅に出た。
鈴鹿山脈に端を発し、琵琶湖へ注ぐ愛知(えち)川。そのほとりの森林を保全する「河辺いきものの森」の最寄り駅として開設したのが河辺の森駅だ。
田畑の中にポツンとたたずむ駅は環境に配慮しており、屋根にソーラーパネルを載せ、駅前に小さなビオトープが造られている。ホームから琵琶湖西岸の比良山地の山並みと、その背後に湧き上がる入道雲が見えた。
駅の南西には近江盆地の独立山塊(さんかい)の一つ、箕作(みつくり)山がそびえる。中腹にある近江西国観音霊場第18番札所の瓦屋寺(かわらやじ)は聖徳太子創建と伝わり、江戸初期に臨済宗の寺として再興されて瓦屋禅寺とも呼ばれる。
寺の石段を上って振り返ると、眼下に田園風景が広がり、その先に鈴鹿の山並みが浮かび上がった。
文・写真/越 信行
近江鉄道本線は1898年開業。河辺の森駅は2004年開業。同駅は米原駅から普通で44分
(出典:「旅行読売」2020年9月号)
(WEB掲載:2022年6月7日)