精霊を弔う厳かな伝統行事
数百年以上も続く京都の伝統行事「五山送り火」
京都のお盆の伝統行事といえば五山送り火。「おしょらいさん(お精霊さん)」と呼ばれる先祖の霊を、再び冥土に送り出すための行事だ。8月16日、東山に大の字が浮かび上がり、続いて妙、法の文字、船形、左大文字、鳥居形と東から西へと順に点火される。
「千本ゑんま堂」の呼び名で知られる引接寺には、「おしょらいさん」にまつわる伝承が残る。平安時代の公卿・小野篁が、京の三大墓地のひとつといわれるこの地に、閻魔法王像を安置したのが始まりといわれる。8月7日から12日に行われる「お精霊迎え」では、閻魔様の許しを得た精霊を迎えるために水塔婆を池に流し、大勢の人が迎え鐘(梵鐘)を撞く。そして8月16日は、送り鐘を撞いて「おしょらいさん」をあの世に送り帰すのだという。
六道珍皇寺も閻魔様ゆかりの寺院だ。あの世とこの世を行き来する神通力を有する篁が、本堂裏庭の井戸を冥府通いの入り口として使っていたという逸話から、この地が冥土への通路だと信じられてきた。本尊は薬師三尊像だが、閻魔堂には篁の作と伝わる閻魔大王坐像や小野篁卿立像を安置する。お盆時期の8月7日から10日に行われる「六道まいり」では、迎え鐘を撞くことができる。
鳥居形の送り火の麓、広沢池で執り行われるのが遍照寺灯籠流しだ。御霊を送る読経とご詠歌が流れる中、仏の五智を顕す赤・黄・青・白・緑の灯籠が池を漂い、幽玄の世界が広がる。灯籠流しの終盤には、鳥居形の送り火が点火され、同時に観ることができる。