【私だけのひとり旅】水郷柳川をどんこ舟で巡る
川下りの料金は1700円~。北原白秋の童謡など船頭さんによるおもてなしも楽しい(写真/柳川市観光協会)
新緑の城下町でのんびり川下り
水郷柳川といえば、掘割と呼ばれる水路を「どんこ舟」で巡る川下りが有名だ。西鉄福岡(天神)駅発の西鉄天神大牟田線に乗り、約50分で西鉄柳川駅に着く。駅から徒歩10分圏内に四つの船会社の乗船場があり、定員になると出航する。
掘割を彩る鮮やかな新緑、爽やかな川風、間近に見える水面のきらめき。船頭が竿(さお)1本で操る小さな舟(ふね)は住居や学校など、柳川の暮らしの営みの中を、人が歩くのと同じ速さで、ゆっくり、のんびりと進んでいく。
「5月下旬からはショウブがきれいですよ」と船頭さん。時折、頭がぶつかりそうなほど狭くて暗い橋の下をくぐるが、それも楽しい。
ほとりに並ぶ家々には、掘割に下りるための階段が今も残る。昔は掘割で洗い物をしたり、自家用の舟で掘割を行き来していたそうだ。
約1時間で「柳川藩主立花邸 御花(おはな)」近くの船着き場に到着した。「御花」では、明治時代に整えられた庭園、松濤(しょうとう)園や大広間などを一般に公開しており、大広間から松濤園を一望できる。縁側に座り、視野いっぱいの庭園を眺めるもよし。少し後ろの畳の上から、絵画のように縁どられた景色を楽しむもよし。大名文化の粋を垣間見た気分だ。
柳川名物に当地発祥の「うなぎのせいろ蒸し」がある。江戸中期創業の老舗、皿屋福柳(ふくりゅう)で味わった。うなぎを一度蒲焼きにしてからご飯と一緒に蒸し上げるので、香ばしい上に軟らかい。ご飯にも甘辛いタレのうま味がよく染み込んで箸が進む。
近くには、近代日本を代表する詩人、北原白秋の生家・記念館もある。周辺は1900年創業の醤油(しょうゆ)屋さん、88歳のおばあちゃんが営むせんべい屋さんなど、歴史を感じさせる店が軒を連ねる。おばあちゃんの話が面白く、つい長居していたら日が傾いてきた。次は1泊しようかな……。後ろ髪を引かれながら帰りの電車に乗った。
文/茂島信一
柳川 立ち寄りたい店&施設
江戸時代、柳川藩主の別邸だった「御花」は明治に入り料亭旅館となったが、今も藩主の末裔(まつえい)、立花家が運営しており、立花氏庭園内の松濤園、大広間、立花家史料館を一般に開放。ホテルや食事処もある。7000坪に及ぶ敷地は国指定名勝。
■10時~16時/無休(臨時休あり)/1000円/西鉄柳川駅からバス11分、御花前下車すぐ/TEL:0944-73-2189
※掲載時のデータです。
江戸中期に創業。北原白秋も愛した味。「うなぎのせいろ蒸し」は3000円。伝統の味を元に10代当主が工夫を重ねたタレは、甘さと辛さのバランスが絶妙。レトロな店内も趣がある。うなぎのおむすびを有明海産のノリで巻いた「うなむす」も名物。
■11時30分~14時30分(売店は〜18時)/木曜、第2・第4水曜休/西鉄柳川駅からバス11分、御花前下車徒歩5分/TEL:0944-72-2404
※掲載時のデータです。
造り酒屋を営んでいた北原白秋の生家を復元。明治時代の商家の趣にひたりながら、白秋直筆の原稿や貴重な写真などを見学し、詩聖の足跡をたどれる。白秋が愛した柳川の歴史や民俗に触れられる資料も豊富にそろう。
■600円/9時~16時30分/12月29日~1月3日休/西鉄柳川駅からバス11分、御花前下車徒歩6分/TE:0944-72-6773
※掲載時のデータです。