【私の初めてのひとり旅】村井美樹さん 千葉、東京、ニューヨーク(2)
初めての海外ひとり旅は、ニューヨークへのセンチメンタルジャーニーだった。写真は国際連合本部での村井さん
むらい・みき(女優・タレント)
2002年、ミス早稲田でグランプリを受賞し、NHKドラマで女優デビュー。クイズ番組や歴史番組など高学歴知性派タレントとしても活躍。テレビ東京の水バラ「ローカル路線バスVS鉄道乗り継ぎ対決旅」では、鉄道チームリーダーで「鬼軍曹」として人気。
傷心のニューヨーク旅行。孤独感から自立心が生まれた
【私の初めてのひとり旅】村井美樹さん 千葉、東京、ニューヨーク(1)から続く
でもその年は合格できなかったんです。早稲田しか受けなかったから、浪人が決まった時はすごくショックで、「あ、これから自分は何者でもないんだ」という思いが生じたのです。学生でもない、自分が誰だか証明できるIDもない。どこにも所属していない不安感に押しつぶされそうになりながら、わずかに残る春休みを利用してひとりアメリカへ。今思えば、それが人生を変える大切なひとり旅になったんですよね。
滞在先はニューヨーク郊外にある母の友人・サラさん宅。彼女は私が赤ん坊の頃、我が家にホームステイしたこともあり、その縁で1週間ほど泊まらせてもらいました。
日中はできるだけひとりで出かけました。アポロシアターで日本人のパフォーマンスに刺激を受け、ミュージカル「キャッツ」の歌唱力に感動し、メトロポリタンミュージアムやMoMA(モマ)でアート鑑賞。何もかもスケールが大きくて衝撃的でした。
一方、どこにいてもピリピリとした緊張感を肌で感じたのも初めてのこと。電車やバスで隣に座っている人の国籍が分からない中、今の私は自分についてきちんと説明できるのかなと、さまざまな思いがよぎったのです。こんなこと日本で考えたこともなかった。今までずいぶん生ぬるい所にいたんだなと痛感しました。
街ゆくニューヨークの人たちは自立し、キラキラ輝いて見えました。無意識にその時の自分と比べていたせいかもしれません。でもなぜか、強い孤独感の中で見聞きし、体験したことって、ストレートに心に入って来たんです。そして自分のエネルギーになる。私もちゃんとひとりで立てるよう頑張っていかなきゃと、気持ちを奮い立たせてもらえました。
この経験が支えになり、不安感や孤独感ともしっかり向き合え猛勉強! 晴れて早稲田大学へ進学できました。あの時、両親はよく行かせてくれたなぁと感謝しかありません。
最近は仕事や子育ての合間をぬって、ひとり旅を楽しんでいます。ひとりって寂しくない?とよく聞かれますが、ひとり旅こそ最高の贅沢(ぜいたく)。誰かと一緒だと見過ごしちゃうような、ひとりだからこそ見える風景があったり、駅で見かけたポスターの犬山城に一目ぼれして急きょ訪ねてみたり(これが城にはまるきっかけ)、スマホを手放し、あえて地元の人から情報を収集したり。自分の心が普段とは違う動きをしていると、ふと感じるのです。そして新たな自分を発見することもしばしば。だからひとり旅はやめられないんですよね。
聞き手/中 文子
(出典:「旅行読売」2023年8月号)
(Web掲載:2023年10月7日)
村井さんプロデュースのお城グッズ・miraimuki(ミライムキ)
御城印帳(石垣)、トートバッグの乳金物(ちちかなもの)、破風(はふ)、ポーチの城、狭間(さま)など、城にまつわる素材がモチーフになっている。男女問わず使え、北欧風のシンプルでおしゃれなデザインが好評。購入はムニカンで。