【出港!海の旅】昔日の青函連絡船の面影を探して、津軽海峡を渡る(2)
波穏やかな津軽海峡を快適に航行する津軽海峡フェリー
函館市青函連絡船記念館摩周丸へ
【出港!海の旅】昔日の青函連絡船の面影を探して、津軽海峡を渡る(1)から続く
現在の海の旅に戻ろう。3時間40分という所要時間は、寝転んだり、イス席に座ったり、軽食で小腹を満たし、デッキを散歩して過ごすのにちょうどいい。仮眠をとってドライブの疲れを癒やすもよし。プライバシーを重視するならスイートルームや個室も用意されていて、ちょっとした贅沢感に浸れる。
夜景の名所で知られる函館山が近づくと間もなく函館港に到着。船で函館にアプローチするのは初めてだ。多くの貨物船や商船が停泊し、異国情緒に彩りを添えていた。
函館では、函館駅近くの「函館市青函連絡船記念館摩周丸」が歴史を後世に伝えている。摩周丸と八甲田丸は「姉妹船」で、構造はほぼ同じ。1954年、1430人が犠牲になった洞爺丸事故を受け、日本の最新造船技術の粋を集めて建造した「津軽丸型連絡船(高速自動化船)」7隻のうちの2隻だ。
海には航路の数だけ物語がある
ここでボランティアガイドを務める佐藤幸雄さんも、青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸の葛西鎌司さんと同様に連絡船の最終便に1等航海士として乗船していたという。津軽海峡の北と南で歴史を伝える2人の人生は連絡船の歴史そのもの。さらに二人は示し合わせたように、「修学旅行で連絡船に乗ったことがきっかけで、船の仕事を目指した」と言う。弘前で育った葛西さんは、修学旅行で初めて海を見たそうだ。
「連絡船最後の航海の時は、巡視船が寄り添ってくれた。貨物船や漁船、たくさんの船から『ご苦労さまでした』と無線が入ってきた。さすがにじ~んときたね」と佐藤さん。一瞬、視線が遠くの海に向き、回顧のまなざしに変わった。
「航路の数だけ、物語がある。」(八甲田丸パンフレットより)。70歳を過ぎても矍鑠(かくしゃく)とした二人の姿と快適な津軽海峡フェリーの旅が、まずは私の物語の1ページとなった。
文/渡辺貴由 写真/齋藤雄輝
まだある、津軽海峡フェリー情報
■函館〜大間に加え、新航路・室蘭〜青森も
津軽海峡フェリーでは、青森と函館を結ぶ愛称「津軽海峡ロード」のほか、函館と下北半島北端の大間を結ぶ「ノスタルジック航路」も運航している。1日2~3便で、40kmを1時間30分で結ぶ。
車利用なら、青森~函館~大間とフェリーを乗り継ぎ、下北半島をドライブして青森方面へ戻る周遊プランも魅力たっぷりだ。
また、今年10月2日には室蘭と青森を結ぶ新航路の運航を開始する予定。室蘭発20時-青森着翌3時、青森発9時-室蘭着15時45分の1日1便(室蘭発日曜、青森発月曜を除く)。10月~5月の料金(年末年始、GWを除く)は、旅客5090円(スタンダード)、自動車6m未満2万4550円。
■お得な定額割引プラン「海割ドライブ プラス」
5日前までのWeb予約限定で、普通車1台定員まで何人乗っても定額のプラン。函館〜青森1万7800円、函館〜大間1万4800円、室蘭〜青森2万2000円と、家族や友人との旅行ならかなりお得だ。
また徒歩乗船客限定(バイク、自転車同伴可。5日前までのWeb予約限定)の「海割ウォーク」もある。函館〜青森2380円、室蘭〜青森4000円。
津軽海峡フェリー運航ダイヤ(9月30日までのダイヤ)
開館時間:8時30分~17時(11月~3月は9時~16時)
休館日:無休(4月に臨時休館あり)
入館料:500円
アクセス:函館線函館駅から徒歩4分
問い合わせ:TEL0138-27-2500
※データは取材時のものです。
(出典:「旅行読売」2023年8月号)
(Web掲載:2023年10月11日)