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フルムーン夫婦グリーンパスで北へ 函館の街を歩き“あの頃”に出会う

場所
> 函館市
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フルムーン夫婦グリーンパスで北へ 函館の街を歩き“あの頃”に出会う

函館山山頂からの夜景。美しさもさることながら、夫婦二人で眺めたことが一生の思い出になる(写真提供/函館市観光部)

乗り放題のグリーン車で来へ。函館の夜景やいかに?

夫婦で年に2、3回は旅をするが、今回はちょっと奮発して、グリーン車も含むJR全線(一部利用不可)が乗り放題の「フルムーン夫婦グリーンパス」の旅に出た。行き先は、妻が取り寄せたパンフレットにあった「あなたの〝あの頃〟に出会う街」のキャッチフレーズに惹かれ、北海道新幹線で函館へ行くことにした。

期待に胸を膨らませ東京駅から北海道新幹線はやぶさのグリーン車に乗った。2列×2列のゆったりとした座席、茶色を基調に木目を多用したシックな内装、カーペットが敷かれた通路が何ともぜいたくな気分にさせる。「グリーン車なんて何十年ぶりかしら」と弾む妻。「俺だってずいぶん前だよ」などと話しているうちに仙台駅、盛岡駅、新青森駅と過ぎて青函トンネルをくぐる。

グリーン車だって乗り放題!(写真/伊藤岳志)
グリーン車だって乗り放題!(写真/伊藤岳志)

東京-函館を往復するだけで元がとれるお得なきっぷ

ちなみに東京―新函館北斗駅間の片道の1人分の運賃・特急料金は2万2,690円、それにグリーン料金7,890円を加えて計3万580円。パスの料金は2人分だから東京―新函館北斗駅を往復するだけでも、きっぷの元は十分にとれている。

石川さゆりの歌「津軽海峡・冬景色」世代の筆者にとって函館は、上野発の夜行列車と青函連絡船で「はるばる」のイメージだったが、駅弁を食べ普段より饒舌になって退屈することなく4時間少々。新函館北斗駅に着いた。

快速に乗り換え15分ほどの函館の街は、駅舎も駅前も朝市も新幹線開業合わせて一新されていた。朝市はフードコートもできて整然とし、なんだかスーパーのようだったが、市場内の「きくよ食堂」で食べた「元祖函館巴丼」のとろけるようなウニの食感は、昔と変わらなかった。

「きくよ食堂」の名物、ウニ、イクラ、ホタテの「元祖函館巴丼」
「きくよ食堂」の名物、ウニ、イクラ、ホタテの「元祖函館巴丼」

明治の郷愁のベイエリア、教会や洋館が並ぶ元町

函館朝市から10分ほど歩いたベイエリアには、のこぎり屋根の金森赤レンガ倉庫や和洋折衷の建物が並び、ロープウェイのかかる函館山が見える。山麓に函館ハリストス正教会やカトリック元町教会の尖塔ものぞく。「函館の名所がひとそろいね」と妻は感激。「せっかくだから」とツーショット写真を撮ってもらった。

元町への八幡坂を上る妻の手を引く。そんな瞬間や「ありがとう」の言葉も〝あの頃〟に出会うひとコマだろうか。

1858年、日本で最初の領事館が箱館に置かれたことに端を発する函館ハリストス正教会
1858年、日本で最初の領事館が箱館に置かれたことに端を発する函館ハリストス正教会

きらめく夜景は宝石よりも価値あるプレゼント

宿泊地に選んだのは開湯350年、北海道最古といわれる湯の川温泉。漁火が見える海辺の「湯の浜ホテル」を予約しておいた。夕食の後、宿から乗れる夜景観光バス「Mt.函館夜景ロマンコース」で函館山山頂を目指す。両側に海が迫る扇状の町にきらめく夜景は、まさに宝石をまき散らしたようで、二人そろって歓声を上げる。本物の宝石は用意できなかったが、妻へのささやかなプレゼントである。

翌日は路面電車で終点の谷地頭まで行き、荒波が打ち砕ける立待岬まで歩く。途中の石川啄木一族の墓には岩手生まれで函館、札幌、小樽、釧路と漂泊し、東京でわずか26歳で亡くなった歌人啄木が眠る。

その後はロープウェイで再び函館山に上って昼間の景色を見た後、洋食の名店「五島軒本店」で名物の「明治の洋食&カレーセット」を昼食に。さらには市電で五稜郭まで足を延ばした。

老舗の洋食店・五島軒で人気ランチのひとつ「明治の洋食&カレーライス」
老舗の洋食店・五島軒で人気ランチのひとつ「明治の洋食&カレーライス」

その先へ、予定なき旅に期待が高まる

「フルムーン夫婦グリーンパスの有効期間はあと3日もあるし、もったいないからもっと旅を」という。〝あの頃〟のように、行き当たりばったりの旅も悪くはない。函館から東京へ折り返すつもりだったが、特急スーパー北斗で札幌へと旅程を変更。札幌まで行けば定山渓や小樽、富良野なども巡りたい。帰りには盛岡や仙台でも降りてみようか。思いを膨らませながら、ポケットの中のきっぷを握りしめた。

文・写真/中尾隆之

フルムーン夫婦グリーンパスとは

JR全線の特急・急行・普通・快速列車のグリーン車、普通車指定席、自由席が乗り放題になる。新幹線「のぞみ」「みずほ」など一部列車を除く。

利用条件
2人の年齢を合計して88歳以上の夫婦が同一の行程、同一の列車で旅行する場合。夫婦のいずれかが70歳以上の場合さらに5000円引き

発売期間
2020531日まで

利用期間
2020630日まで(1228日~16日、321日~45日、427日~56日を除く)

値段(2人分)
5日間:82800
7日間:102750
12日間:127950

問い合わせ
JR東日本お問い合わせセンター
TEL 050-2016-1600
https://www.jreast.co.jp/

施設データ

きくよ食堂
TEL 0138-22-3732
http://hakodate-kikuyo.com/

夜景観光バス「Mt.函館夜景ロマンコース」
TEL 0138-57-4000(北都交通)
http://hokuto-hk.jp/yakei_roman

五島軒本店
TEL 0138-23-1106
https://gotoken1879.jp/

湯の浜ホテル
TEL 0138-59-2231
https://www.yunohama-hotel.com/ 


(出典 「旅行読売」2017年12月号)
(ウェブ掲載 2019年10月1日)

Writer

中尾隆之 さん

北海道生まれ。旅行作家。日本旅のペンクラブ代表会員。テレビ東京系列「TVチャンピオン 全国土産銘菓通選手権」優勝。著書に「全国和菓子風土記」「日本百銘菓」など